フォロワーシップの自覚

JR宮古駅構内にて(2012年1月撮影)。1年経ったが、JRの不通状況は変わっていない。

宮古高校2年の久坂千明さんは教職志望。身近に多様なキャリアを持った先生が多く、教育以外の学部に進むことも考えている。しかし、そうすると、久坂さんはどういう学校に行けばいいのでしょうか。

「うーん……そうなんですよ……。とりあえず、宮古は出ます。出て、4卒に進みます」

岩手県は出ますか?

「ちょっと迷ってて。もし宮城教育大とかの教育学部に進むとすれば、受験の時から、数学は数学科、国語は国語科って学部分けられちゃうんですけど、岩手大だと、1年生の時はみんな同じ授業受けて、それからどこか好きな学部行ってねっていうかんじで。そっちのほうが、もし『数学じゃなくてもいいや』って思えた時にいいですし」

先生になろうとするとき、すでに教職を仕事としている人に何を聞きたいですか。

「今、得たいなぁと思っているのは、話し方というか。授業がうまい先生とか、雑談がうまい先生って、必ずどこかに人を惹きつけるポイントがあるんです。たとえば、規則にメッチャ厳しかった先生とかは、『これは駄目だ。なぜ駄目なのか』みたいなかんじで、すごい論理的に話してくれたり。授業も、ダラダラやるんじゃなくて、びっしりやってくれたり。あと、問題解く時とかも、間(ま)をすごい適度に与えてくれたりとか。生徒にどういうことを話せばいいか、どういう間を与えればいいか、どういう話し方をすればいいか、ベテランの先生だとわかっているんです。そういうところをいろんな先生に話してもらいたいです」

久坂さん、教職に就いたとき、どこで暮らしていると思いますか。

「できれば東北で就職したいんですけれど、岩手県とか秋田県は、特に採用が厳しいので……。都会は就職が楽っちゃ楽なんですけど、あまり住みたくないんですね。東京は、東北とかと違って、教員の離職率も多いって聞いてるし。モンスターペアレント厳しいって聞くんですよ。親に責められたときに、ちょっとわたし、無理です、プレッシャー(笑)」

久坂さんにも取材後に長いメールを送った。《他の5人(特に「相棒」の赤沼涼香さん)の発言をフォローし、より具体的な内容にしていく力が久坂さんにはあると思います。ここで質問です。久坂さんは、自分に「人を支えて、その人の良いところを伸ばすアシスト力」があると意識していますか? 自分が前に出なくても構わないタイプですか?》

「アシスト力はあまり意識したことはありません。涼香さんについては、宮古高校放送部の自慢の彼女にもっと輝いてほしいなあと思い、発言しました。わたし自身はアシスト力があるかどうかはわかりませんが、『人の長所を伸ばしていける人』にはなりたいと思っています。自分の発言でだれかを伸ばせるなら、とても嬉しいです。わたしはリーダーになるというよりも、リーダーを支え、かつ意見をしっかり言えるような人になりたいです」

メールを送って良かった。久坂さんたち300人の高校生が参加した3週間の合州国短期留学、その名称は「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」だ。テーマは、その名にあるとおり「リーダーシップ」。だからといって、合州国から帰ってきた300人全員が、このあとの人生でリーダー役を担うだろうか。では、このテーマの意味はどこにあったのか。これが疑問として残っていた。久坂さんの返信は、ひとつの答えだろう。リーダーシップを学ぶことは、フォロワーシップに目覚める機会にもなりうるのだ。

最後に、久坂さんの良き相棒に登場してもらおう。