志望校は超田舎にあります

「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」のひとこま。

「自己主張できるようで、実は溜めこむ派なんで」——宮古高校2年生、佐々木くるみさんのひとことが気になり、取材後に長文のメールを送った。

《佐々木さん、自分の進路を、具体的な学校名や会社名で決めるのは、しんどいですか? なぜ、こういう質問をするのか。取材時のノートを読み返していて、佐々木さんのひとことが絶妙に残り5人を和ませ、あの場を回していることにあらためて気づきました。佐々木さんは友だちを楽しくさせる話し方をする一方で、自分の内側の部分をあまり話さない。具体的な学校名を、会社名を、絞り込んだ職業名を挙げよ——大人たちが言ってくるこういう「要求」そのものが、ある種のしんどさになってしまう人もいるのではないか。これがこちらの仮説なのですが》

「わたしは別にしんどくないです。むしろ中学生のときから具体的な高校、大学は考えてたし、実際は同級生の中でも考えているほうだと勝手に思ってます(笑)。職業は具体的には考えてないので、漠然としたものしか言えませんでしたが。わたしは以前、自己主張が激しいと友だちから怒られました。確かに、自分をベラベラと話してて周りが見えていませんでした。なので、それ以来だれかと話すときは、聞き役に徹することが多かったです。今もそうです。訊かれたらしゃべるけど、自らは多くは語らないです。ほんとうは進路について語りたいことは山々なのです。自分でいうのもなんですが、自然と周りに気を使ってたのかもしれません。あのときは、自分だけ面白みのない話をベラベラ喋ってたらみんな退屈だろうし、時間も限られてるし……とか、いろいろ考えていました」

追加取材メールには、志望校があれば教えてほしい、とも書いた。佐々木さんからは、群馬県立女子大学と、津田塾大学の名が返ってきた。外資系企業で働きたいという佐々木さんから、英語教育に強いとされる津田塾の名が出たことに違和感はなかったが、群馬県立女子大のことは不勉強で、あらためて調べた。1980(昭和55)年開学、文学部と国際コミュニケーション学部を持つ。学部学生数957人。場所は群馬県佐波郡玉村町、前橋駅からバスで35分とある。

「群馬県立女子大に入りたいと思った理由。まず留学制度が整っているという面です。短期でも長期でも学校から補助金が出ます。次にTOEICなどの資格取得に力を入れているというところです。あと少人数教育も魅力的だと思いました。津田塾大もそうなのですが、少人数教育だと、内容の濃いキメ細かい英語教育を受けられるのではないかと考えたからです。けど群馬の超田舎にあります。今住んでる場所も超田舎にあるので少々嫌な部分があります。それに引き換え東京は憧れです。通勤ラッシュでさえ憧れを持っているほどです(笑)。たぶんすぐ嫌になると思いますが(笑)。なんでもある東京がとにかく田舎者の憧れです」

ウエブブラウザの表示限界があり、佐々木さんのメールにある多彩な絵文字を、単純な「(笑)」に置き換えざるを得ないのが残念だ。

「津田塾大は立地条件もカリキュラムも群馬県立女子大より優っています。津田塾大に行きたいと思った理由は、単に塾の先生に勧められたからです(笑)。勧められて調べたら、なんとイイかんじではないですか(笑)。少人数教育、英語学習設備の充実、二カ国語の習得など。ただ、インターネットでわからなかったのは留学制度が整っているかどうか。補助金が出れば文句なしです。津田塾大学は私立の中でもおてごろだと調べてて感じました。親に私立に入ってもいい? と聞いたら『最終的には就職できれば私立でもいい』とのことでした。つまり企業ウケのよい!? 津田塾大学はひょっとしたら有利なのでは? と思いましたがどう思われますか?」

このあと、佐々木さんとは、企業人事部が大学をどう見ているか、良き女子大とは何かといったメールをやり取りすることになる。

次に話を聞くのは、佐々木くるみさんと同じくらい場を和ませ、助け船を大量に出港させていた高校生だ。