株式投資が物価上昇に強い理由
では、なぜ株式投資は物価の上昇に強いのだろうか。そのことを示すことは比較的容易だ。
株価がそもそもの「物価」を左右する企業活動と、切っても切れない関係にあるからだ。
会社は、物価の上昇分を商品やサービスの値段に上乗せして販売することによって、株価の元となる売上や利益を高めようとする。通常、会社はモノやサービスをつくるうえで必要な原材料や輸送費、電気代などが値上がりしたら、そのぶん、商品やサービスに価格転嫁して売上を伸ばそうとする。
その一方で、経営努力を行ってコスト削減にも取り組み利益を伸ばす努力をする。その結果、会社の売上や利益の増加につながり、利益が増えれば株価は上昇する。
先ほどのコンビニのおにぎりの例で考えてみよう。足元でおにぎりが値上がりした背景には、電気代や輸送費、人手不足による人件費の高騰などが背景にある。消費者はモノの値段が上がれば購入を手控えるものだが、おにぎりくらいであればわざわざ家で作って持ち歩くのも面倒だし、「数十円の値上がりだったら仕方ないか」と、ついいままで通り買ってしまう。もしかすると値上がりに気づきもしないかもしれない。
そのうち、こだわりのある高価で美味しそうなおにぎりまで登場すると、一度食べてみたいとつい手が伸びてしまう。こうしてコンビニを運営する会社は、うまく消費者の心理をついた新商品を出してくる。
その結果、物価は上がっても、それ以上に売上や利益は成長し、株価も上昇する。
長期で見ればインフレ率を上回るリターンがある
もちろん長い歴史のなかでは、物価の上昇が起きない時期もあれば戦後の日本やオイルショック時のように急激な物価上昇(ハイパーインフレ)に苦しむ時期もあり、株式投資の成果がどの期間をとっても常に良好というわけではない。しかし、長期で見た場合、株式のリターンが、物価上昇(インフレ)率を概ね5%前後(年平均)上回っているという事実は、重要な示唆だ(図表3)。
つまり、お金の実質的な価値である「購買力を維持」し、将来お金に換金できる「資産の価値を高める」投資対象は、「株式」と(株式の集まりである)「株式型の投資信託」が中心となる。