心臓への負担も少ない「有酸素運動」が最も有効

このため私が院長をつとめる大島医院でも、病状が安定していれば、心臓病の患者さんにも運動療法を広く積極的に施しています。

その最も有効な手段が、有酸素運動です。

有酸素運動は英語で「エアロビクス」といい、カラダを動かす燃料として酸素を使った軽い負荷の運動です。スポーツジムで激しく手足を動かすアレは、どう見ても息が苦しそうで、有酸素というよりは、無酸素運動と考えたほうがいいかもしれません。

運動を強くすると、筋肉から疲労物質である乳酸が出てきて疲れてきます。乳酸によってカラダが酸性になるので、呼吸を大きく頻繁に行うことで二酸化炭素を吐き出し、元に戻そうとして息が上がってくるのです。

これより、強い運動を「無酸素運動」といいます。無酸素運動は筋肉を動かすエネルギー源として酸素を使わず、息が苦しくなって、血圧が上昇し、心拍数が速まり、その先はもう運動ができなくなってしまいます。

有酸素運動は、カラダに酸素を十分に取り込んだ状態で運動することで、血圧や心拍数の上昇が起こりにくく、心臓への負担も少ない。息も苦しくありません。だから、安全に長く続けることができるのです。糖尿病や脂質異常症、高血圧にも劇的な効果を示し、心筋梗塞や脳梗塞を予防する効果も明らかとなっています。

ウォーキングは「1日3000歩」から始める

心臓力を高めるために最適な有酸素運動は、ウォーキング(歩くこと)です。ケガや事故が少なく、長期にわたって個人のペースで続けることができ、糖尿病や脂質異常症、高血圧が改善します。

女性スニーカー夕方ジョギング
写真=iStock.com/SPmemory
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最初は、1日30分、最低1日おきに歩きましょう。はじめから歩数を決めてしまうと、無理な運動になってしまい、腰痛や膝痛の原因になりかねません。歩数はあくまでも結果です。まずは、1日3000歩を目安にスタートするのがよいでしょう。

1日に3000歩を無理なくこなせるようになると、歩数は自然に増えていきます。それが「運動療法」の効果であり、長く歩けるようになると、寿命も延びることが研究結果としてあらわれています。

運動の強度を上げていくと、次第に息が苦しくなっていきます。その分岐点を専門用語でAT(Anaerobics Threshold/嫌気性けんきせい代謝たいしゃ閾値いきち)といいます。

その分岐点を意識することが、有酸素運動のポイントです。ATの範囲内の運動であれば、カラダに酸素が足りている状態なので、心臓に負担がかかり過ぎることなく、危険が少ないのです。