大谷がホームラン王のタイトルを逃した原因
2023年、日本人として史上初めてMLBのホームラン王に輝いた大谷翔平が、メジャーで最初にホームラン王を争ったのは2021年だった。この年、大谷はシーズン前半戦だけで33本のホームランを放ち、リーグ単独トップに立っていた。投打二刀流で選出されたオールスターでは、日本人選手としてはじめてホームランダービーに出場し、推定飛距離150mを越える特大ホームランを連発した。
そのシーズン、大谷は日本人選手として初のホームラン王どころか、アメリカンリーグ新記録の本塁打さえも射程圏内に捉えていたが、後半戦は13本塁打と失速。結局、ホームラン王のタイトルはトップと2本差で逃す。
後半戦で失速した原因は、大谷と対戦する投手たちがほとんどストライクを投げてこなくなったことだ。オールスター後は敬遠を含む四球が激増し、9月には3試合で11四球というMLBタイ記録も樹立。日本のメディアも米国のメディアも、大谷があまりにも危険な打者であることを多くの投手たちが理解して、勝負を避けるようになったのだと論じた。
あるいは、大谷の前後を打つはずのマイク・トラウト、アンソニー・レンドンといった強打者たちが相次いで故障離脱し、相手投手は大谷と無理に勝負する必要がなくなったという影響があったかもしれない。おそらくはその両方が理由だろう。
アメリカでは今も人種差別的な考えを抱く人が少なくない
もしかするとボイヤーが30年以上も前に言った通り「『ジャップにタイトルを獲らせるな!』という連中」がいたのだろうか?
人種差別への風当たりが強い今日のアメリカで、そんなことを公言する選手や監督はいないので(まれに失言する選手はいるが、厳しいペナルティを受ける)、実際のところはわからない。
しかし、黒人差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター」運動の盛り上がりや、その反動とも言える白人至上主義団体やネオナチの台頭、ヘイトスピーチの蔓延などを見ていると、アメリカでは今も人種差別的な考えを抱く人が少なくないことは確かだ。
少なくとも2000年代前半、まだ野茂英雄のデビューから10年と経っていないころは、MLBの現場では日本人の選手やスタッフが差別を受けることは珍しくなかった。
〈“大谷フィーバー”の裏で日本人記者が失態…「岩によじ登って撮影し、排除された」大谷翔平ばかり追いかける日本メディアのリアル〉へ続く