自由と民主主義は大きな武器になる

――1990年代以降、半導体業界では設計と製造の分離が進む中、日本は設計から製造までを一貫する「垂直統合型」にこだわり続け、衰退しました。一方で台湾は李登輝元総統(1923~2020)が巨額の出資でいち早く製造に舵を切り、現在の下地が成立しました。これらをどう評価しますか?

私の著書では、半導体戦争の視点よりも、むしろ企業と産業の発展に焦点を当てました。あえて地政学的話題に踏み込むならば、李登輝元総統と同時に、安倍晋三元首相(1954~2022)にも触れておきましょう。安倍氏は2016年に訪米し、当時のトランプ次期大統領と会って日米同盟の強化や、自由で開かれたインド太平洋戦略について話し合いました。

林宏文(著)、野嶋剛(監修)、牧髙光里(翻訳)『TSMC 世界を動かすヒミツ』(CCCメディアハウス)
林宏文(著)、野嶋剛(監修)、牧髙光里(翻訳)『TSMC 世界を動かすヒミツ』(CCCメディアハウス)

その後発足したトランプ政権は、中国との摩擦のなかで、「チップ4同盟」という構想・戦略を打ち出してきて、日米台韓のアライアンスがこの時から始まったとえます。今ではこれに欧州を加えた「チップ5」という構想も浮上していますね。

他方、台湾の半導体産業を推進し、総統退任後も「日台IoT(Internet of Things)同盟」などを提唱した李登輝氏については、半導体というジャンル以前に、台湾の自由と民主主義を進歩させた点で大いに評価できますし、尊敬もしています。

蒋介石、蒋経国父子の時代の後、台湾はすごく平和な社会に変化しました。「護国神山」の異名の通り、TSMCは台湾の守り神のような存在ですが、もうひとつの盾をあげるとすれば、それは「自由と民主主義」です。これもまた共通する価値観として、日台産業連携の大きな柱となるでしょう。

変化を恐れない覚悟があれば成長できる

――最後に、台湾の半導体産業の隆盛の核心についてお聞かせください

台湾の半導体産業の必勝法は「3プラス1」。その詳細は本に書きましたのでぜひ参考にしていただきたいと思いますが、そのなかで日本の産業界にも大いに参考になり得る点は3つあげられます。

まずはビジネスモデルでの革新、次に企業の柔軟性と対応力、そして創業の精神です。一緒に競争しつつ、アライアンスを緊密にし、互いに強くなっていく。その中で、日本はどうやって変わっていくべきなのかはとても重要です。変化をおそれない覚悟ができたなら、まずは目の前にやってきたTSMCという名の台湾をよく研究してほしいですね。

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