帝人株問題が飛び火し鳩山一郎文部大臣も辞職、政局は混乱

2月6日、内大臣・牧野伸顕のぶあきは昭和天皇に対し、「中島商相の尊氏論云々の事情もただ御参考として御聞取りの事なれば何等支障は無之これなく」と述べ(伊藤隆・広瀬順皓編『牧野伸顕日記』中央公論社)、楽観的に捉えていた。しかしながら、中島はこの3日後には辞任を余儀なくされる。

筒井清忠・編著『昭和史研究の最前線』(朝日新書)
筒井清忠・編著『昭和史研究の最前線』(朝日新書)

この間、同月8日の衆議院本会議では政友会久原派の岡本一巳かずみが三土、鳩山、中島の3閣僚を名指しして帝人株問題を取り上げ、樺太工業株式会社をめぐる鳩山の収賄疑惑を暴露する(五月雨さみだれ演説)。岡本はこの2日後に政友会を除名処分となるが、同15日には同じく政友会の江藤源九郎(元陸軍少将)も衆議院本会議での緊急動議で鳩山と三土の背任疑惑を追及している。

3月3日、衆議院の事実調査委員会は岡本の発言内容を事実無根とする報告書をまとめ、議長宛に提出するが、鳩山は文教政策への影響に鑑み、同日付で辞任する。鈴木ら政友会執行部にとって、岡本の五月雨演説はまったくの寝耳に水であり、党内の混乱を印象付けるものであった。

後編に続く

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