自尊心を守るために挑戦をしなくなる
より悪い方向に働くと、自分の檻のなかに閉じこもるようになります。
アメリカの心理学者スティーブン・ベルグラスとエドワード・ジョーンズが提唱した「セルフ・ハンディキャッピング」という概念は、この点をよく示しています。
セルフ・ハンディキャッピングとは、「失敗しても仕方がない言い訳」をつくったり、「そもそも挑戦しない」という自己防衛が働く心理のことです。
完璧主義者はしばしば、「忙しいからできなかった」「最近体調が悪いから遠慮する」などと言って、自分を守ります。
これによって、自尊心を守ることはできますが、目標に挑戦するよりも、自分を守るための言い訳を探すことに力を注ぐようになるでしょう。
完璧を目指すことに固執すると、このような自己制限的な心理が働くようになり、結果的に自身の可能性を閉ざしてしまうのです。
そもそも仕事における「100点」など存在しない
目指すべきは、理想的な100点よりも、実用的な80点です。
完璧でなくても、合格点にさえ達すれば仕事は進むのですから、戦略的に妥協することも必要です。
そもそも、仕事における100点なんてありません。学校の試験ではないので、正解は1つではないのです。
完璧主義の人が考える100点が、上司や取引先、市場が求めているものとも限りません。案外、完璧主義の人が「こんなんでいいの?」と首を傾かしげたくなる企画が通ったり、顧客に喜ばれたり、売れたりするケースはたくさんあります。
なお、勉強においても完璧主義は避けるべきです。
たとえば英語学習では、翻訳家でない限り、英単語の意味をざっくりと覚えるだけで十分です。文脈があれば、前後の言葉の流れから大体の意味が掴めます。
すべての意味を完璧に覚える必要はないのです。しかし、完璧を目指すあまり、しばしば1つの単語にこだわりすぎ、学習が進まない人をたくさん見てきました。
単語学習では「質よりも量」が重要で、多くの単語を覚えることが質の高い理解につながります。そのため、「文脈で意味が変わるので、70~80%くらいの理解で大丈夫だよ」とアドバイスしています。
適当に力を抜くことも、効率的かつ健康的な生活を送るうえでは、重要なスキルです。
この考え方は、特に現代社会において重要でしょう。
多くの人が成果に対するプレッシャーにさらされている現代、より高いパフォーマンスを求める完璧主義の人は増えているように感じます。
しかし、完璧主義を求めすぎると、ストレスなどで、かえってパフォーマンスが下がるのは先に説明した通りです。
それよりも、戦略的に妥協したほうが、仕事もプライベートもより充実したものになるでしょう。