「岸田首相は6月に解散するつもりだ」
島根1区補選は細田博之前衆院議長が多臓器不全で亡くなったことに伴って行われる。
3補選の中で唯一「政治とカネ」の問題が直接の原因とはなっていないが、それでも細田氏は裏金キックバックが組織的に行われた清和会の元会長。
裏金問題と無関係とは言えず、自民が議席を独占してきた保守王国とは言え、自民候補は立憲候補に対して苦戦を強いられている。
そして、この選挙の結果によって大きく左右されるのが岸田文雄首相の今後だ。
ただでさえ支持率が低迷している岸田政権だが、島根1区で敗れれば求心力はさらに低下し、今年9月に予定されている自民党総裁選で引きずり降ろされる可能性もある。
一方で、島根1区で勝利し体裁を整えることができれば、総裁選に先駆けて今国会中に衆議院を解散し、総選挙に打って出るのではないかとも言われている。
もちろん、島根1区補選に勝ったからといって自民党への逆風が収まるわけではないし、そこから支持率が急激に上がるとも考えにくい。
ただ、岸田首相は党幹部に相談せずに自身が率いてきた派閥、宏池会を解散したように「何をしでかすか分からない」と永田町では見られている。
「自民党が有利か不利かより、首相のうちに自身の手で解散を打てるかどうかだけ考えているのではないか」という評判もついて回るほどだ。
実際に、首相に近しい官邸関係者は「岸田首相は6月に解散するつもりだ」と周辺に語っており、引き締めを図っている。
ポスト岸田は「初の女性総理」か
しかし、そんな岸田首相に同調する動きは今のところ自民党内には皆無だ。
永田町関係者によると、党ナンバー2の茂木氏は周辺に「岸田じゃ選挙は戦えない。6月に解散したら、政権交代まではいかなくても自公で過半数割れする」と話し、暗に岸田氏を牽制。
さらに、裏金議員への自民党処分によって不平不満を抱える元安倍派の議員たちからは岸田首相への怨嗟の声が挙がっており、解散させずに総裁選で引きずり降ろそうとする動きも起き始めている。
そうした状況を待ち構えるように高市早苗経済安保相は勉強会を重ね、一方で上川陽子外相を持ち上げる声も挙がる。
まだ有力な総裁候補が決まったわけではないが、日本初の女性総理を誕生させることで、現在の逆風を一気に押しのけようという声は自民党内に根強く存在する。
島根1区補選に勝利すれば、岸田首相を中心に自民党内で解散政局が巻き起こり、島根1区補選に敗れれば、岸田おろしが一層加速する。勝っても負けても国政では混沌とした権力闘争が続きそうだ。
一方で、国民が求めているのは権力闘争ではない。
補欠選挙で問われているのは、真に国民のための政治ができるか否かで、その結果を各政党は重く受け止める必要があるだろう。
投開票は4月28日。各選挙区での審判が注目される。