5月から始まった高校生活

立花沙耶香さん(原町高校2年生)。

立花沙耶香(たちばな・さやか)さんは原町高校2年3組(選抜コース)。「父は相馬市役所で働いています。母は相馬で会社員をしています」。住んでいるのは北隣の相馬市。そこから原町高校に通うはずだったが、入学直前に震災が起きた。

「震災があってすぐ山形の親戚の家に避難しました。2週間くらいいて相馬に帰ってきて、自分の家、祖父母の家の掃除とかをしました。学校が始まらなかったので、毎日塾に行って高校の勉強をちょっとずつ始めてもらいました」

4月、立花さんの高校生活は始まらなかった。5月9日、原町高校は相双(相馬高校、300人)と県北(福島西高、50人)、2つの高校の空き教室を工面するかたちでサテライトキャンパスを設け、ようやく授業を再開する。本来の原町高校キャンパスでの授業が再開されたのは昨年の11月だ。始業が遅れたぶん、夏休みが削られた。

「夏休みは2週間くらいだった気がします。半月分なくなりました……」

メールで送った質問への返答だ。文末の「……」が、夏休みを失ったしょんぼり感を現している。気を取り直して未来の話を訊こう。立花さんは将来何屋になりたいですか。

「小学校の養護教諭になりたいです。子どもが好きなのと、怪我の手当とかしながら心のケアもできる、子どもがよく見える人になりたいなと思って。中学校の保健室の先生が、いろいろ相談したときに自分のことをすごいわかってくれるっていうか、なんか理解してくれる先生で。話してて、悩み事とかなくなるわけじゃないけど、あんまり考えすぎないようにとかしてくれる先生で。震災があって、なんか将来のことを考えるようになって、『何になろうかな』っていうときに、養護教諭っていうのが頭に浮かんで。ちっちゃい子たちが、地震とかあって、いろいろ精神的に悩んでることとかサポートできる人になりたいなって思って。

養護教諭の1種っていうのを取りたくて。私立じゃなくて、国公立に入りたいです。でも、国公立は養護教諭の養成課程があるところがほんとうに少なくて。私立はいっぱいあるんですけど……」

国公立大学で養護教諭養成課程を持つ大学は、最も古く1975(昭和50)年に開設された茨城大学を始め、現在でも8校しかない。

養護教諭になるには、教育職員免許法に定める「養護教諭免許状」がまず必要だ。「1種免許」は4年制大学(教員養成系大学の養護教諭養成課程や看護大学など)で所定の養護と教職の単位を取得しなければならない。「2種免許」は短期大学で取得する。そのうえで、各都道府県(市)教育委員会が行う教員採用試験に合格し、採用候補者名簿に登載されなければならない。立花さん、具体的な大学名は考えていますか。

「埼玉大学か、あとは茨城大学も考えてます。学校の担任の先生とかに聞いたり、あと、教室に置いてあった本とかで調べて」

茨城大の養護教諭養成課程は2000名の卒業生を送り出した「名門」だ。ではなぜ埼玉大の名が。気になったのは、埼玉大学の名をこの連載の他の取材地でも聞いていたからだ。なぜ、東北の高校生の口から、埼玉大の名前が出るのか。

(次回に続く)