腸内で酪酸菌を増やす方法

人が分解・吸収できない食物繊維は、大腸でほとんどが分解され、不溶性の食物繊維である木の繊維であるセルロースも、ほとんどが大腸で分解されます。ほとんどの食物繊維は大腸で分解され、作られた物質は大腸で吸収されるのです。

実験動物として使用されているハツカネズミはマウスと呼ばれていますが、マウスを用いた実験では、面白いことがわかっています。マウスの子どもを帝王切開で出産させて、注意して細菌に触れさせないように育てると、腸の中に細菌のいない“無菌マウス”というものができます。

無菌マウスを、無菌のまま育てたマウスと親マウスの便を食べさせたマウスで成長を比較すると、便を食べたマウスの体重のほうがはるかに重くなります。これは、腸内細菌が無菌マウスでは分解できない物質を分解・吸収させたことが原因です。

また、人の話に戻ります。大腸で多糖やオリゴ糖(糖が3~10個くらいつながった多糖)が分解されると、脂肪酸が生成されます。酢酸、酪酸、プロピオン酸、乳酸などです。これらの脂肪酸は短鎖脂肪酸と呼ばれています。酪酸、プロピオン酸、乳酸は酢酸と比べて大きな分子で、酪酸は酪酸菌が作り、プロピオン酸はプロピオン酸菌が作り、乳酸は乳酸菌やビフィズス菌が作ります。

酪酸、プロピオン酸、乳酸は放っておくと、最終的に小さな分子である酢酸まで分解されますが、その前に大腸細胞によって吸収されます。また、酢酸も吸収されます。

フラクトオリゴ糖が最も効果が高い

前に説明したように、吸収された酪酸はTレグ細胞を増やします。さまざまな食物繊維で酪酸を増やす効果が検討されてきました。その結果、フラクトオリゴ糖が最も効果が高いことが明らかとなりました。

フラクトオリゴ糖は、1分子の砂糖に1~10個程度のフラクトース(果糖)がつながったオリゴ糖です。フラクトースが10個以上たくさんつながったものはイヌリンと呼ばれていますが、イヌリンは低分子のフラクトオリゴ糖より酪酸菌を増やす効果が弱いことがわかっています。

フラクトオリゴ糖とイヌリンは、タマネギ、ニンニク、ゴボウ、キクイモ、ヤーコン、バナナ、アスパラガスなどさまざまな野菜に含まれていますが、これらに含まれるフラクトオリゴ糖類(イヌリンも含む)は低分子から高分子まで、さまざまな大きさの混合物なのです。

大量のゴボウのイメージ
写真=iStock.com/Jonathan Austin Daniels
※写真はイメージです

ここでは、一括してフラクトオリゴ糖と呼びますが、日常生活で、私たちは1~3グラムのフラクトオリゴ糖を食べています。しかし、この量では自己免疫疾患とアレルギーを抑えるには不足しています。私たちは、フラクトオリゴ糖を含む食品をもっと多く摂る必要があるのです。