藤井聡太、連覇を逃す 「最高勝率」更新には一歩及ばず、それでも期待がかかる「大棋士の記録」とは(相崎 修司)

3月17日に放映された第73回NHK杯戦決勝は、藤井聡太竜王・名人VS佐々木勇気八段という2年連続の同一カードとなり、昨年のリベンジを果たした佐々木が初優勝した。また同日に行われた第49期棋王戦第4局に藤井は勝ち、棋王防衛を決めた。この結果、藤井の2023年度成績が46勝8敗、勝率0.852で確定し、中原誠十六世名人が1967年度に記録した年度最高勝率の0.855(47勝8敗)の更新にはあと一歩で及ばなかった。

前人未到の全八冠制覇達成など、今年度の藤井の活躍についていまさら触れるまでもない。しかし、ここまでの活躍をしても勝率記録の更新には至らなかった。60年近く孤高の地位にある「勝率0.855」の数字に迫ってみたい。

そして、勝率記録以外でも藤井に更新の期待がかかる、過去の大棋士の記録はどのようなものがあるのか。それぞれ見ていきたい。

今期の藤井聡太竜王・名人は、史上初の「八冠」を達成した ©文藝春秋

藤井聡太竜王でも超えられない中原十六世名人の「勝率0.855」

まずは年度勝率記録について。中原十六世名人との比較対象として、今年度(3月17日まで)の藤井と藤本渚五段、95年度の羽生善治九段を挙げたい。いずれも勝率記録の更新に期待が掛かっていた。

まずは中原の記録から、47勝8敗の内訳はそれぞれ、

第22期順位戦C級1組 11勝1敗

第7期十段戦 1勝1敗

第9期王位戦 4勝0敗

第17期王将戦 3勝1敗(二上達也に1敗)

第11期棋聖戦 11勝3敗(升田幸三に1勝、二上達也に1勝、大山康晴に1勝、タイトル戦五番勝負は山田道美に2勝3敗)

第12期棋聖戦 1勝0敗

第15期王座戦 0勝1敗

第16期王座戦 6勝0敗

第17回東西対抗勝継戦 3勝1敗

第1回日本将棋連盟杯 2勝0敗

第11回古豪新鋭戦 5勝0敗

となっている。

続いて今年度の藤井、46勝8敗の内訳は以下のとおり。

第36期竜王戦 4勝0敗(タイトル戦七番勝負は伊藤匠に4勝0敗)

第81期名人戦 4勝1敗(タイトル戦七番勝負は渡辺明に4勝1敗)

第64期王位戦 4勝1敗(タイトル戦七番勝負は佐々木大地に4勝1敗)

第8期叡王戦 3勝1敗(タイトル戦五番勝負は菅井竜也に3勝1敗)

第71期王座戦 7勝1敗(タイトル戦五番勝負は永瀬拓矢に3勝1敗)

第49期棋王戦 3勝0敗1持将棋(タイトル戦五番勝負は伊藤匠に2勝0敗1持将棋)

第73期王将戦 4勝0敗(タイトル戦七番勝負は菅井竜也に4勝0敗)

第94期棋聖戦 3勝1敗(タイトル戦五番勝負は佐々木大地に3勝1敗)

第17回朝日杯 3勝1敗

第31期銀河戦 4勝1敗

第73回NHK杯 4勝1敗

第44回将棋日本シリーズ 3勝0敗