大槌-仕事場は求人票が来るところ

大槌町江岸寺(こうがんじ)前の電信柱。高さ2.5メートルの位置に印が付けられている。(撮影=東 紗紀)

大槌高校2年生の東紗希さん。志望はケアマネジャー。仕事に就いたとき、どこで暮らしていると思いますかと訊く。

「釜石、大槌、宮古、遠野。最初は家から通って、お金が貯まったらひとり暮らしをしてみたいです」

釜石は大槌の南隣。宮古は海岸沿いに車で北へ約1時間。遠野は釜石からJR釜石線で約1時間。確かに通勤可能な範囲だろうが、ずいぶんと具体的に地名が上がるのはなぜか。

「大槌高校に求人が来るところだから」

東さんは屈託ない表情で答えたが、こちらは少々うろたえた。求人票が来る範囲が、彼女の進路を自動的に限定しているということではないか。そのことを東さんに言ってみたが、彼女の屈託のない表情は変わることはなかった。

「かさ上げの目安の写真は、江岸寺(こうがんじ)前の電信柱にはってあるものです。江岸寺は津波の被害をうけたけれど、現在は仮設のお寺を建ててやっています。この他にも、町内の電柱何カ所かに同じものが貼ってあります。震災の影響により大槌を離れてしまった方に、大槌がどのように復興するのか(どのくらい、かさ上げするのか)、どんな復興計画なのかを知って戴きたい。そう思いました。『何メートル』という数字を聞くよりは写真を見た方がわかりやすいと思います。いつか、また大槌へ戻ってきてもらえるように、震災を風化させないように沿岸の私たちに出来ることをしていきたいです」

取材後に東さんから送られてきた写真に添えてあったことばだ。

この連載では、現地取材を終えたあとも「TOMODACHI~」に参加した高校生たちと、Facebook 上に開設されたグループで連絡を取り合っている。そこに東さんが大槌の今の写真を載せていた。被災地の現状がよくわかる写真だったので、こちらからお願いしてさらに何点かを撮影してもらった。大槌編に掲載しているのは、「『何メートル』という数字を聞くよりは写真を見た方がわかりやすいと思います」と考え、自分が暮らす町に、かつて暮らしていた人たちに届けたいと考える高校生から、そうやって送ってもらった写真である。