夫がプーチンの監視下で獄中死したとき、妻が発したメッセージ
「こんにちは。ユリア・ナワルナヤです。今日初めてこの(夫の)チャンネルであなた方にお話します。私はこの場所にいるべきではなかった。このビデオを録画すべきではなかった。私の代わりに別の人がいるはずだった。しかし、その人はウラジーミル・プーチンによって殺されました」
獄中死した、ロシアの反体制野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ(1976年6月4日~2024年2月16日)。妻のユリア・ナワルナヤ(47歳)は、この言葉でYouTubeに語りかけ始めた。とても毅然とした態度で。夫の遺志を継ぐ決意を表明する動画メッセージである。
「アレクセイを殺すことで、プーチンは私の半分、私の心の半分、魂の半分を殺しました。しかし、私にはまだ残りの半分があります。それは私にあきらめる権利がないことを告げています」
「私はアレクセイ・ナワリヌイの仕事を続けます。私は、私たちの国のために闘い続けます。私たちを捉えて離すことのない悲しみと、終わりのない痛みを共有するだけではなく、私の怒りを共有してください。私たちの未来を殺そうとする者たちに対する怒り、憤怒、憎しみを共にしてください」
ロシア国内に戻れば命が危険で、夫の葬儀には参列できず
この動画でユリアは、暗い紺色の上衣を身に着け、薄化粧だった。背景は暗く、幾つかろうそく型の電気が灯されていた。しかしマニキュアは、彼女の決意を表すかのように真っ赤だった。
「私たちはあらゆる機会を利用して、戦争、汚職、不正と闘わなければなりません。公正な選挙と言論の自由のために闘い、私達の国を取り戻す闘いです」
「ロシア、夫が心から夢見ていた自由で、平和で、幸せで、美しい未来のロシア。それが私たちが必要とするロシアです。そんなロシアに住みたいのです。アレクセイと私の子供には、そんなロシアに住んでほしいです。私はアレクセイが心に思い描いていた、そんなロシアをあなた方と一緒に築きたいのです」
夫アレクセイの葬儀が3月2日にモスクワで行われたが、ユリアの姿はどこにもなかった。現在国外にいて、もし戻ったら二度と出られず命の危険があると言われている。
しかし、そんな彼女の経歴は、日本だけではなく、欧米のメディアでもあまり知られていない。彼女は「内助の功」的な役割に徹していたからだ。夫と一緒にデモに参加しても、政治的な主張をすることはたいへん稀だった。いったい、どのような女性なのだろうか。