統制を強めるほど、ヒト・モノ・カネが流出していく

企業の海外脱出も増えた。それと同時に海外からの直接投資は減少した。2023年、外資企業の中国投資は過去30年ぶりの低水準だった。不動産バブル崩壊によるデフレ環境の鮮明化、需要の低迷懸念、“ゼロコロナ政策”で明らかになった予測困難な政策、台湾問題、人権問題など、外資離れ加速の要因は多い。本土ではなく海外市場での新規株式公開(IPO)を目指す中国の企業も増えた。

今回の全人代で統制強化が一段と明確になり、今後、海外移住を目指す中国人や海外移転を目指す中国企業は増える可能性がある。自由に活動できないとなると、人も企業もより自由な環境を目指すことになる。反スパイ法のリスクなどを回避するため、インドなど成長期待が高く人件費も相対的に低い場所に拠点を移す海外企業も増えるだろう。

「国内消費で経済成長を目指す」としているが…

統制強化で中国の国民や企業の自由を制約すると、結果的に経済のダイナミズムを減殺することになる恐れがある。現在、中国は、これまでの輸出・インフラ投資主導の経済構造から、国内の個人消費主導へとモデルチェンジを図っているところだ。

リーマンショックまで、中国は豊富かつ安価な労働力を強みに“世界の工場”としての地位を確立した。インフラ投資や輸出主導の経済運営により高成長を遂げた。リーマンショック後、世界の需要減少に直面した中国は、輸出から国内の投資へと切り替えた。マンションなどの不動産投資、高速道路や鉄道などのインフラ投資、企業の設備投資などを増やした。

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過去のピーク時、不動産関連の需要は中国のGDPの30%近くに達したとの試算もあった。ところが、不動産バブル崩壊で投資牽引型の経済モデルは限界を露呈した。

今回の全人代で李強首相は、中央政府の財政支出を増やして家電など耐久財の消費を振興し、内需の拡大を実現して5%前後の経済成長率の実現を目指すとした。内需拡大によって、雇用・所得環境の改善と安定も実現する考えだ。