数学の証明の図などはきちっと書いてみる

柳川範之『東大教授がゆるっと教える独学リスキリング入門』(中央公論新社)
柳川範之『東大教授がゆるっと教える独学リスキリング入門』(中央公論新社)

ただ書くことによって頭に入ったり、整理をしたりということはありますので、たとえば数学の証明だったら、その証明の図をきちっと書いてみるとか、そういうことはやるのですが、ノートというかたちで残す必要はぜんぜんない、ということになりました。あと暗記的なものは、メモで一番最後にぱっと見られるようなものを作るくらいにしました。そうしたほうが効果があったので、その後はそのやり方を続けました。

このエピソードで伝えたいことは、だから皆さんノートをとらないほうがいいですよということではなくて、やはり人それぞれいろいろなやり方があるということだろうと思います。私の場合は、ノートをとらずに自分なりの暗記の仕方とか、頭の使い方をしたほうがずっと勉強の能率が上がったということです。でも、やはり普通はノートに書いて、きちっとまとめて覚える、ということが一般には言われていますし、それで能率が上がる人は当然いると思います。ただ、そういう既存の概念ややり方にあまりこだわらずに、少し自分なりのやり方を工夫してみるのもいいんじゃないか、という気がするんですね。

勉強や研究のやり方を自分なりに工夫するのが大切

学者になってからあらためて思うことは、勉強や研究のマスターの仕方を、自分なりに工夫することが実はとても大事だという点です。そこをうまくやれると、ずっと早いスピードでステップアップをしていきますし、そこを間違うと結局回り道をしてしまうということなんじゃないかなと思います。

たぶんこれは、勉強だけではないと思うんです。スポーツでも同じで、何回も何時間も練習することは大事なんですが、コーチに何かちょっとコツを教えてもらうとすごくうまく蹴れるようになったり、投げられるようになったりする。それと同じように、自分に合った勉強の仕方、時間の使い方をうまくつかめると、ぐっとステップアップできるのだろうと思います。

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