ネットも携帯も最初からあった。親や教師の「進路の常識」は根底から崩れた。300人の高校生は、そういう時間の中で育った。

「ONE PIECE」連載開始時は、まだ2歳

高校生300人全員集合。カリフォルニア大学バークレー校にて。(ソフトバンク提供)

「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」に参加した300人の高校生(1~3年生)は、1994年4月から1997年3月までの間に生まれている。

細川護煕内閣の総辞職(1994年4月)、阪神淡路大震災(1995年1月)、民主党の発足(1996年9月)が、高校生たちが生まれた年の出来事だ。今の高校3年生が生まれた頃には、まだソフトバンクは通信市場には参加していない(但し、95年にヤフーに最初の出資を行っている)。高校3年生が生まれた94年の4月、東京デジタルホンが携帯電話事業を開始。同社は今の高校3年生が幼稚園に通っていた99年10月にJ-フォンに社名変更し、小学校入学の年——2001年4月にボーダフォン傘下に入る。そのボーダフォンがソフトバンク傘下に入った2006年にはまだ小学校6年生だ。

今の高校3年生は「ONE PIECE」連載開始時(1997年)にはまだ2歳だ(連載が長すぎるだけかもしれないが)。EXILEデビュー時(2001年)が小学校1年生。ヤフー日本法人が街頭でADSLモデムを無料配布し、ADSL事業「Yahoo! BB」を始めたのは同じ年だ。Amazon.co.jp の日本上陸(2000年)は小学校入学の前年。iTunes Music Store の日本上陸(2005年)は小学校5年生の夏、iPhone 3G が日本で初めて発売されたとき(2009年)で、ようやく中学校3年生だ。

大人たちにはつい昨日のように思われる18年間だが、その18年間はインターネットと携帯電話が爆発的に普及し、消費のかたち、そして日本の雇用慣行、働き方が大きく変わった18年間でもある。労働者派遣法の対象業種が原則自由化されたのは、今の高校3年生が5歳のとき(1999[平成]11年)だ。全国の自殺者数は4歳のときから14年連続で3万人を超えている。「失われた20年」は、そのまま高校生たちのここまでの人生を包括している。バブル景気を知る両親や、高度成長の中で生きてきた祖父母たちの「進路選択の常識」は、果たしてどれほど役に立つのか。高校生たちを教える教師が教員免許状を取得したときの「学歴の有効性」は、今どれほど通用するだろうか。

被災と3週間の合州国を体験した高校生たちは、今までの日本にはなかった「働き方」を考え、新しい孫正義になるのだろうか。それとも、彼ら彼女らの前に大人たちが敷設するライフコースは、大人たちの時代の常識のままで、高校生たちはそれに沿って歩んでいくのだろうか。

被災地で出合った高校生たちが語った職業名は実に多様なものだった。だが、それを業種分野別に分けてみると、3分の1のシェアを占めた分野があった。