英語入試が急速に増えていく理由

中学受験では数年以内に、英語入試が一般化することが予想されます。現在、英語で受験した中学合格者は、全体の5%前後と見られていますが、その割合も急拡大するでしょう。なぜなら、中学・高校の進学先である大学が、実社会のニーズに対応するべく、「英語力の高い学生」を求めているからです。25年からは、大学入試システムも刷新され、英会話のスキルがより重視されます。私立大学は、中堅以下ほど、AO入試などで「英語」という“一芸”に秀でた学生を多く獲得し、就職実績と人気を高めようとするでしょう。

そうした大学のニーズを、私立中学・高校が見逃すはずはありません。大学から引く手あまたの英語力の高い卒業生を送り出せば、自校の進学実績もアップするからです。中長期的には、少子化が進むのは避けられません。中堅以下の中学が学校の命運を懸け、「英語力に優れた小学生の青田買い」に躍起になっても、不思議ではありません。頌栄女子学院は、帰国生など英語力の高い生徒を積極的に受け入れ、全体の学力を底上げ、大学進学実績を飛躍的に伸ばしたと言われています。

実際に、首都圏の私立中学について、23年の入試科目を調べてみると、中堅以下では、英語入試の実施校が目白押しであることがわかります。募集人数は少ないものの、「英語のみ」の入試を行う中学も約30校あります。「英検資格取得者には入試を免除する」という、特典を設けている中学も目立ちます。つまり、「英語が得意な小学生」は、破格の厚遇ぶりなのです。ほかの科目の成績が振るわなくても、英語の成績さえよければ、“合格させる”という中学もあるほどです。

英語入試を実施しているのは、中堅以下の中学ばかりではありません。例えば、慶應義塾湘南藤沢は、国語、算数、英語の選択入試を行っています。さきほど、中学受験の英語入試は平均で英検4〜3級相当のレベルとお伝えしました。英検3級であれば、「中学卒業レベル」の英語力です。ところが、慶應湘南の場合、何と大学生レベルの「英検準1級」の英語力が問われるほど、狭き門なのです。

私立大学の付属中学も続々と英語入試をスタートしており、例えば、大妻中野は、高校卒業レベルの「英検2級」でも不合格者が出るなど難関化しています。茨城県きっての進学校である江戸川学園取手は22年、全国初と言われる国語・算数・社会・理科・英語の5科目入試を始めました。

女子学院、フェリス女学院のような英語教育を強化してきたミッションスクールもやがては、中学の英語入試に踏み切る可能性があると見ています。女子校の入試ではグループワークが取り入れられることも多く、そこに英語が入ってきてもおかしくありません。

英会話力が弱いと言われてきた男子難関校も英語教育に力を入れ始めており、中学受験で英語入試を取り入れる中学が増えるでしょう。学習塾もそうした動きを見越して、小学生低学年向けの英会話スクールを開講しています。

文化学園大学杉並中学校 英語入試サンプル問題