子供のがん保険まで払っていたら老後はもたない

家族や友人たちと、仲間内で保険をつくることもできる。信用があって計算が上手な人が中心になって、数年も賭け金を貯めれば、かなりの金額になる。先ほど紹介した友人がこれまでに払った保険料の総額は1700万円。彼が住むマンションの保証金よりも多い(韓国には、家賃を払う代わりに高額の保証金を家主に預けて家を借りる伝貰チョンセという制度がある)。

彼の息子が生まれたときに加入した子どもがん保険も含めて、加入している保険は8本にもなる。その子はもう18歳だ。だが、解約すれば元本を割ってしまうという心配で、むやみに解約もできないでいる。

英字の保険契約書類のイメージ
写真=iStock.com/designer491
※写真はイメージです

人生100年時代、老後の心配をする人は多い。

しかし、2018年の統計庁の発表では、韓国人の平均寿命は82.7歳で、前年と変わっていない。もちろん、平均寿命がこの200年間で急速かつ着実に伸びてきたのは事実だ。人類の平均寿命は、1800年代にはわずか40歳だったが、1900年代初頭には60歳に達し、2000年代に入ると80歳になった。

しかし、これは石鹸の普及や栄養状態、住環境の改善、各種予防接種の発明と普及にともなう乳児死亡率の低下がもたらした結果だ。だから、平均寿命はどこまでも伸び続けるわけではない。伸び率が頭打ちになったのは2011年からだが、この傾向から見て、今後は平均寿命が1年伸びるのに12年程度かかると考えられる。

損害保険、旅行保険、認知症保険、がん保険も要らない

仮に2100年に平均寿命100歳が現実になるとしても、読者のなかでそれまで自分が生きていることを心配して保険料を払う人は少ないだろう。人生100年というキーワードは、保険会社が打ち出したスローガンでも最高のヒット作だ。運が悪ければ100歳まで生きてしまうかもしれない、という意味だ。

事実、私は自分の会社の健康保険と自動車保険以外にいかなる保険にも加入していない。

住宅に火災保険もつけていないし、生命保険にも入っていない。損害保険、旅行保険、認知症保険、がん保険にも加入していない。

私は韓国とアメリカにそれぞれ30万円ほどの健康保険料を支払っているが、過去10年間の医療費支出は10万円にもならない。運転もほとんどせず、二十数年前に接触事故があったきりだ。それも後ろから追突されたものだ。

人は最悪のケースを心配して保険に加入するが、その保険料、二十数年分を預金しておけば、確率上は自己保険(預金)のほうが有利だ。なぜなら、保険会社のどの商品も、そもそもあなたに不利なように設計されているからだ。貯蓄型とか、非課税とか、更新型とか、魅力的な誘い文句がついていても、結局は顧客にとって不利な商品でしかない。