この時代、「妻に看取られて死ぬ」とは限らない

実は、この「一人で生きる未来」に対する覚悟が足りないのは男性のほうです。一般的に平均寿命は男性より女性のほうが長く、夫婦間の年の差も夫年上婚が多かったので、たいていの夫は妻に看取られて亡くなるパターンを想定しているからでしょう。

しかし、今後もその傾向が続く保証はありません。夫が定年退職した後の熟年離婚数も増えていますし、死別によらない単身化もあり得ます。高齢者となった時の「一人暮らし」は決して未婚者だけの問題ではなく、誰にも訪れる可能性があります。

高齢者の一人暮らしというと、よく「孤立死」の話題になりがちですが、重要なのは「どう死ぬか」よりも「一人になった時どう生きるか」でしょう。

一般的に、男性のほうが孤独に強いと思われていますが、実は真逆で、孤独耐性は女性のほうが高いのです。高齢者に対する幸福度調査でも、男性の一人暮らしに比べて、女性のほうが高くなります。また、男性は妻と離婚や死別をすると自殺率が高まるという相関がありますが、女性はまったく無相関です。こう見ると「一人で生きる力」が足りないのは男性のほうだと思わざるを得ません。

話し相手もおらず、毎日がヒマな高齢男性たち

少し古いですが、内閣府が平成26年度に65歳以上の一人暮らしだけに限定して実施した「一人暮らし高齢者に関する意識調査結果」から、高齢一人暮らしの男女の違いについて浮き彫りにしていきましょう。

前述した通り、幸福度は女性のほうが男性より10ポイントも高いのですが、男性高齢一人暮らしの幸福度が低いのは、「毎日に満足していない」「毎日が退屈」という項目が高いという点があります。「経済的な心配がある」も男性のほうが若干高いですが、むしろ男性の不幸度を高めているのは、そこではなく、「他者とのつながり」の部分です。

「相談相手がいない」割合は、女性は11.4%に対し、男性が27.8%、「楽しみを共有できる相手がいない」割合は、女性11.4%に対し、男性は34.4%で3倍の差があります。

このデータを見ると、「高齢一人暮らし男性は友達がいないのだな」と思うかもしれません。

しかし、だからといって、よくある高齢者向けのセミナーにあるような「友達を作りましょう」と言ったところであまり意味はありません。もちろん友達を増やせるならばそれにこしたことはありませんが、それができるくらいならとっくにやっていることでしょう。