韓国で1月9日、食用目的での犬の飼育・食肉処理・流通などを禁じる特別法(犬食禁止法)が成立した。違反者には、最高で3年の懲役、または3000万ウォン(約330万円)の罰金が科される。犬肉に関係する業界を保護するため、法律の施行は公布から3年後とする猶予期間も設けられた。
長い歴史を誇る「犬肉文化」
過去、1988年のソウル五輪など国際社会の視線が韓国に集まるたび、話題を集めてきたのが、長い歴史を誇る韓国の「犬肉文化」だった。東洋文庫『朝鮮の料理書』(平凡社)には、「狗肉の腸詰め」「狗肉の串焼き」「狗肉の汁」「狗肉の蒸しもの」など、朝鮮王朝時代の調理方法が詳しく紹介されている。長く、牛や豚、鶏などを十分に食べられない時代、犬肉は朝鮮の人々にとっての貴重なタンパク源として愛用されてきた。
ほぼ60代以上の韓国の知人たちも「ケゴキ(犬肉)は伝統的な特別食」と口をそろえる。日本でも「補身湯(ポシンタン)」という名前で知られているように、韓国では夏の暑い時期、日本の「土用の丑」にあたる「三伏」に、補身湯や参鶏湯(サムゲタン)などの滋養食を楽しむ習慣がある。また、犬肉は「美容に良い」「怪我や手術後の傷を早く治す効能がある」などとも言われてきた。
韓国スポーツ界で働いてきた60代の知人は現役当時、夏になると記者クラブに出入りする韓国記者団を招いて犬肉を振る舞った。「食べない記者も一部いたが、たいていの記者は出席した。補身湯は、(牛の肉や内臓を煮込んだ)ソルロンタンより2~3倍高いから、記者たちも喜んで食べていた」と話す。
財界人にも「犬肉ファン」が
犬肉は独特の臭みがあるとされ、敬遠する人もいるが、この知人によれば、評判の良い店は調理方法もしっかりしていて、臭みも全く感じないという。財界人にも「犬肉ファン」がいて、1年に1~2度、1人あたり7万ウォンくらいの高級犬肉セットを楽しんでいたという。
もちろん、これは長い歴史があってのことで、犬肉文化を知らない外国人からみれば、「野蛮な行為」に映るのだろう。1990年代にソウル大に留学した外交官の知人は、ソウル大生から「理系の奴らは新歓コンパに犬を連れてきて、みんなで食べているらしい」という話を聞いて震え上がった。
ソウル近郊の水原市にあった犬肉専用市場に行くと、檻に入れられた中型の食用犬が、視界に入るだけで数十匹以上いた。そこでは猫も売られていて、市場関係者から「これは漢方薬に使うから」と聞かされ、更に仰天したという。