安楽死が合法化されるとどんなことが起きるのか。著述家の児玉真美さんは「カナダでは合法化からわずか5年で安楽死者数が4万人を超えた。経済的に困窮した障害者が死を選ぶケースも起き、問題になっている」という――。

※本稿は、児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

病院のベッドに横たわる高齢者の手を握る人
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後発国でありながら「安楽死先進国」になったカナダ

カナダは安楽死の合法化では2016年と後発国でありながら、次々にラディカルな方向に舵を切り続け、今ではベルギー、オランダを抜き去る勢い。ぶっちぎりの「先進国」となっている。

カナダではケベック州が先行して2015年に合法化したが、その際に法律の文言として積極的安楽死と医師幇助自殺の両方をひとくくりにMAID(Medical Assistance in Dying)と称し、翌年の合法化でカナダ連邦政府もそれを踏襲した。Medical Assistance in Dyingを平たい日本語にすると「死にゆく際の医療的介助」。しかし、これでは積極的安楽死から緩和ケアまでがひと繫がりのものとして括られてしまう。

安楽死を推進する立場はそれまでにもAID(Assistance in Dying)、VAD(Voluntary Assisted Dying)、PAD(Physician-Assisted Dying)などの文言を用いることによって、暗に「安楽死は死ぬ時に医療の助けを得ることであり、緩和ケアと変わらない」というメッセージを発信してきたが、カナダは国としてその立場を明瞭に打ち出して安楽死を合法化したといってよいのではないだろうか。