「人間は能力に応じて働き、能力に応じて与えられる」

【バリバリ資本主義者】好きなことやって生きていくのは資本主義のほうがやりやすいと思うんですけどね。資本主義では欲望がエネルギーとなって、創造性を高め、新しい技術を開発してどんどんやりたいこともできるようになりますからね。

【マルクス】でも私の分析では、資本主義とは、土地や工場などの生産手段を資本家が所有し、自分たちの利益追求のために労働者を働かせて生産を行う経済体制です。だから資本主義とは結局、企業側が儲かる仕組みであって、労働者は資本家に搾取され続けるのです。今「好きなことで生きている」というような人々も、結局は労働者ではなく資本家に寄っていると思えますね。労働者はみんな幸せそうに働いていますか?

【バリバリ資本主義者】それは、働くことよりも遊ぶことを優先している人が多いからだと思いますね。だから、仕事は苦痛で、仕事中も仕事が終わったあとのことを考えている。働くことを遊びだと思うくらいにしなければダメなんだと思いますよ。

【マルクス】働くことを遊びにするというのは、どちらかというと、私の唱えた社会主義社会の理想です。それに、お金には替えられない大切なものもあるでしょう。家族と過ごす、ゆっくり休む、スポーツをするなど。金儲けで成長することだけを考えていたら、世の中おかしくなってしまいます。

【バリバリ資本主義者】ですが、だからといって社会主義はどうなんですかね。社会主義体制のなかでそこそこ働いて、資本主義レベルの新しい製品が大量に生まれるというのは考え難いですね。結局ソ連なんかも上手くいかなかったわけでしょう。

【マルクス】資本主義が高度に発達した段階で、社会主義段階となり、その後に共産化すればいいのだと思いますよ。ソ連の場合は、十分に資本主義が育っていないうちに社会主義段階となり、共産主義を目指していたから頓挫したという説もあります。

POINT 社会主義と共産主義
マルクス主義(ソ連のマルクス=レーニン主義)では、社会主義社会は共産主義社会の前段階であるとされる。
社会主義社会では、「人間は能力に応じて働き、能力に応じて与えられる」というシステムをもつ。これがより進歩した段階が共産主義社会であり、「人間は能力に応じて働き、必要に応じて与えられる」という理想社会であるとされた。