経営コンサルタントとして驚いた3つのこと
不祥事を起こした大企業というものは、普通は事件が発覚した後でも物事を隠蔽するものです。謝罪会見でも事件そのものについては謝罪せずに「世間をお騒がせしたことをお詫び申し上げます」と論点をずらして謝るのが時代の本流です。
その意味でジャニー喜多川氏の性加害問題について、経営の専門家として驚いたことが3つありました。ひとつは林前検事総長をリーダーとするチームの報告書が深く踏み込んだ内容だったこと、ふたつめにそれを受けてジュリー社長とジャニーズ事務所どちらもが性加害を認めたこと。これはわたしにもサプライズでした。そして3つめに新たに社長に就く東山紀之氏がタレントを引退して、今後の対処に専念してあたると宣言したことです。
近年の大企業にないほど正面から事態を受け止めたことは評価されるべきです。細かいツッコミどころはいくつもあって、100%株を持っているジュリー氏が代表取締役に残留することなど、同族経営の弊害がなくならないのではないかという意見があるのはわかります。タレントである東山氏に経営ができるのか? という批判も耳にします。社名を変えなくてもいいのかという意見はその通りかもしれません。しかし重要なことはそこではないのです。
ジャニーズ事務所の未来を考えた場合、本当に重要な経営課題は「償い」です。
不祥事対応が最悪なのは政治家、次いで官僚
重大な不祥事を起こした過去のケースをわたしもたくさん眺めてきたのですが、一番なめた対応をする傾向があるのが日本の政治家です。謝罪はするけれども謝るだけ。離党はするけれども辞任はしない。更迭されても時間がたてばちゃっかり復活する。こんな感じです。
二番目にひどいのが官僚です。問題をなるべく長く引き伸ばし、裁判に持ち込み、訴訟中はコメントを控え、20年ぐらい時間を稼ぎます。そうして被害者が後期高齢者になるぐらいのタイミングで仕方なく少額のお金で補償する。こんな感じでしょうか。
これは日本社会の風土だと思うのですが、まずは責任を認めない。責任を認めなければいけなくなった場合、謝罪をしても償いをしない。そんな人ほど出世できる。これが世の中だとしたら、ジャニーズ事務所はここ数日で、その本流とは違う謝罪の仕方に踏み切りました。
とはいえ、これからどのようにジャニーズ事務所が事件に向き合っていくのかはあくまで未知数です。新体制に期待感を込めて、どのようにしていくことがジャニーズ事務所の未来にとって一番いいのかを考えてみました。