アンテナを張って地球規模で広く世界を見る
令和5(2023)年6月にようやく国会で成立したLGBT理解増進法も、G7(先進7カ国首脳会議)の国で制度がなかったのは日本だけでした。
世界をぐるっと見たら、次に、日本における状況を見ます。社会の情勢や世論を見て、受け入れられそうなタイミング、その風はいつ日本に吹くだろうかと先を読んで、政策を打つのです。
たとえば、令和4年、国が支給する児童手当について、明石市では独自に高校生世代まで対象を広げることに決めました。「もうすぐ時代が追いついてくる」と読んでいたからです。その後、東京都でも同様の施策の導入が決定されました。
明石市で平成28(2016)年から実施している第2子以降の保育料無料化も、その後、ほかの自治体でも採用しはじめています。
時代というのは必ず変わっていきます。人の価値観も移り変わっていきます。同性婚だって、少し前までは多くの人が「ノー」と言っていたのに、いまは少なからぬ人が「いいんじゃないかな」という時代でしょう。
男性が家事育児をすることも、上の世代だとまだ「ノー」かもしれませんが、それこそみなさんの世代では多くの人が「イエス」なのではないでしょうか。
時の少数者が時代の移り変わりとともに多数者になっていくのが歴史の流れ。いまの時代の少数者は将来の多数者になり、いまの多数者は将来の少数者になる。多数者がずっと多数者であることはなく、歴史の中で入れ替わっていくものなのです。
アンテナを張って地球規模で広く世界を見ること、そして歴史が動いていくという時間の流れを意識することで、多くの思い込みを取り払うことができると思います。
能力は高いのに視野が狭いエリート東大生
視野の広さでさらにいうと、自分の育ってきた環境も影響してきます。自分の生まれ育つ環境は自分では選べませんから、まずは「自分の知っている世界がすべてではない」と意識することが大事です。
たとえば、学校は公立だろうが私立だろうが、どこに行くのもアリ、個人の自由です。
ただ、それこそ私立の進学校といわれるような学校に行くと、同じような高い収入で、教育意識の高い親のもとで育った人間ばかりが集まります。それはそれで悪いことではないのですが、「その狭い世界であたりまえ」のことは、「一歩出ると、まったくあたりまえでない」なんてことはよくあります。
同質性により閉じた世界にいると、多様性に富んだ世の中全体が見えにくくなる可能性が高いということです。
私が東大にいたときにすごくもどかしかったのは、自分たちの能力を世の中のために役立てようとしていない、そんな学生たちが一定数いたことでした。