年功序列で高いポジションにいた人が降格し、若い人材が管理職に上っていく。同期格差は当たり前、年齢関係なしの「報酬下克上」の時代がやってきた。
降格で年収1000万円ダウンも
会社業績の差がビジネスマンの給与格差を生み出す一方、社員間の“社内格差”も拡大している。成果主義賃金の浸透に伴い、今や同期間のみならず年齢を超えた“報酬下克上”時代が到来している。
社会経済生産性本部の調査によると「業績ないし成績の評価結果により、賃金・賞与で相当の格差がついている」との設問に、「当てはまる」と回答した企業が34%。「どちらかといえば当てはまる」と回答した企業を含めると80%を超えている。
同じく「同期間でも昇格・昇進に相当の開きがある」と回答した企業は合計で96.5%にも及んでいる。まぎれもなく企業内では昇進・給与格差が進行していることを示している。
実際にどの程度の給与格差が生まれているのか。外資系大手人事コンサルティング会社ヘイコンサルティンググループの高野研一社長は「年功賃金時代の30代後半の平均年収が800万円とすれば、プラスマイナス4%程度の格差だった。しかし成果主義の時代に入り、格差は2倍の8%程度に広がり、年収にして下は740万円から上は860万円程度まで幅が拡大している」と指摘する。
30代後半で120万円の格差というのはあくまで一般社員層の平均だが、管理職層になるとさらに格差が広がる。
「同期でも昇進・昇格が絡むともっと差が開く。たとえば課長で1200万円の人が部長になると1500万円に上がり、本部長クラスになると2000万円になる。同期の中に圧倒的に高い年収をもらっている人が何人かいるというのは別に珍しくない」(高野社長)
もちろん上がるだけではない。昇格したら下がることはない年功時代の昇進制度とは違い、今は「任にあらず」の烙印を押される降格・減給が成果主義人事の主流だ。先の調査でも「降格や降職となる者が実際にいる」と回答した企業が約53%と半数を超える。実際に「突然役職がなくなれば1000万円程度下がるというルールもある」(高野社長)。
ただし格差の程度はもちろん、格差を生み出す仕組みは個々の企業によって異なる。成果主義といっても短期の個人業績でボーナスの変動幅を大きくする企業もあれば、年俸制によるゼロサム的な制度を導入している企業もある。あるいは同一役職者内の個人業績で変動させるのではなく、優秀な人材の昇進・昇格のスピードを速めることで格差をつけている企業もある。
重要なのは「その会社にとって成果とは何かを明確に定義し、かつ社員がそれを意識して動くようにするための最も効果的な測定ツールが給与なのか、賞与なのか、それとも昇進・昇格がいいのかを考えること」(高野社長)である。