買うのは好きだが、売るのは大嫌い

穐田さんってふわっと仲間を集めるのが上手なんです。仕事にギアが入ったような人たちを集めるのがうまい。それで、アイシーピーの話ですね。アイシーピーにずっといた人っていないんですよ。今もある会社ですけれど、投資をした会社で働いているうちに、そのままそこで社長になったり、独立して会社を始めたり……。

僕自身もカカクコムへも行ったけれど、その後、アルチェっていう女性向けオンラインメディアの会社に行って取締役になり、成長させたところでライブドアに売却しました。アイシーピーにいた石坂(茂)さんはIBJ(結婚相談サービス)を始めた。

穐田さんはとにかくエグジット(株式を売却して現金化すること)を嫌います。大嫌い。絶対反対。

とはいえ、ファンドなので儲けないといけないのではと問うと、『儲けなんて関係ない、もっといい会社になるのに何で売らなきゃいけないんだ』って言い返してくる。アルチェをライブドアに売ったのも穐田さんとしては嫌で嫌で仕方がなかった。

今、くふうカンパニーにたどり着いたのは、会社を売るのが嫌だから。自分がオーナーでいるのであれば、成長させて、ずっと会社を持っていられる。だからオーナーをやる。仕事をしたい仲間とずっと一緒にいることができる。ずっと仲間でいたいから自己資本でやっている。

金より何より、成長を続ける価値に投資する

話を戻すと、フェルメールの絵を見て、喜ぶ人がいる。その人たちを相手にしたビジネスが生まれて、経済が活性化することの方が面白い……。

ポップアートのひとり、アンディ・ウォーホルはかつて「最高のアートはビジネスアートだ」と言った。

野地秩嘉『ユーザーファースト 穐田誉輝とくふうカンパニー 食べログ、クックパッドを育てた男』(プレジデント社)
野地秩嘉『ユーザーファースト 穐田誉輝とくふうカンパニー 食べログ、クックパッドを育てた男』(プレジデント社)

アンディ・ウォーホルの言葉を体現したのが彼だ。

そんな彼はフェルメールを売らないだけではない。本来はカカクコムもクックパッドの株も売りたくなかった。カカクコムの株は約1000倍の価格になった。クックパッドの株もまた一時は1000倍になった。同じくらいに上がった。ただ、経営から離れたので、すべて売り払って、他の会社の株を買う資金に回した。それでも彼は一度、持ったものを売るのは嫌いだ。

現金よりも土地よりも宝石よりも、成長を続ける価値を持っていたい。成長を続ける価値が好きだ。

それもあって投資した会社の株もフェルメールもこれからは手放すつもりはない。

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