ケガ人や急病人が発生したときに、その場に居合わせた人のことを「バイスタンダー」と呼びます。私が生きていられるのは、多くのバイスタンダーの助けがあったからこそです。

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感謝の気持ちを伝えるべく、浜松町駅に向かいました。駅員さんから119番通報をしてくれた方を紹介していただき、お礼に伺うことができました。そして救急搬送された病院へも。主治医から「今度は熊本さんが世の中に恩返しをする番ですね」という言葉をいただきました。

その言葉を胸に、救命講習を受け、救命技能認定証を得ました。

あのときの私には効かなかったのですが、AEDも命を救うためにとても大切です。自分が今いる場所の近くにあるAEDを教えてくれるアプリ(AED N@VI:日本AED財団制作)があります。自分がバイスタンダーになったときに備えています。

また医療ライターという仕事上、突然死を避けるために大切なことを取材し、自分の体験と合わせて伝えることも大事だと思うようになりました。

自分が健康であるとの過信が心肺停止を招いた大きな要因であることは、前述の通りです。今は区の定期健診のほかに、持病持ちになったのでかかりつけ医のもとで3カ月に1回、検査があります。少しでも変化があった場合に、かかりつけ医から指導をいただけるのはありがたいです。

ニトログリセリンを処方してもらい、胸に痛みを感じたときに飲むようにしましたが、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)を飲むようになってからは、一度もニトロの世話になっていません。DHEAは男性ホルモンの一種で、更年期障害の諸症状や倦怠感の改善に効くといわれています。すべての人に効果的かどうかはわかりませんが、私には効いています。

水分もまめに摂るようにしています。昔、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんが枕元に水差しを置いて寝ていましたよね。あれは脱水症状を防ぐための知恵。脱水症状は血管に良くありません。枕元にペットボトルを置き、寝ている間にも水分を摂るよう意識しています。

サッカーよりも怖い休日ゴルフ

心肺停止といいますと、激しい運動と関係が深いと思われがちです。特にサッカーは、2011年に元日本代表の松田直樹選手が練習中に亡くなるなど多くの痛ましいニュースが報じられてきました。でも実は、心肺停止で亡くなる方が多いスポーツは、ゴルフです。ゴルフを楽しむ多くの方は、日頃は運動不足気味でしょう。当日は朝が早いため寝不足ですし、休憩時間にビールをぐびぐび飲んでプレーに戻る。心臓に負担がかかるのは間違いありません。

外出するときは、身元を記したものを携帯することも大事です。いざというとき、スマホは役に立ちません。緊急連絡先、血液型、かかりつけ医の連絡先、持病の有無などを書いた紙を持つことをお勧めします。緊急搬送された患者の身元がわからない場合、病院は警察に連絡をします。逮捕歴のある人は別ですが、そうでない人の場合は、警察が倒れた周辺で聞き込みをします。それでも判明しないケースもかなりあるそうです。

私は一人住まいで、3匹の猫を飼っています。倒れる前から「猫互助会」をつくり、同じ境遇の猫飼い仲間同士で合鍵を託し合い、何かあったときに助け合ってきました。いざというときのペットのライフラインを考えておくことも大切です。

救急搬送された心肺停止疾病者のうち、約7割は自宅で倒れた人たちです。警備会社の中には、自宅の鍵を預かってくれ、ボタンを押すだけで救急通報したうえで自宅に入ってくれるサービスを提供するところもあります。経済的に余裕があるなら、検討するのもいいでしょう。

著名人の突然死の報を聞くと、怖いと思う一方で、他人事だととらえていないでしょうか。私もそうでした。しかし、突然死は、いつ、誰に起こるかわからないのです。

(文=本誌編集部、イラストレーション=米山夏子)
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