タワマン文学を本気で信じるのは残念
「タワマンで子育てをするようになって気づいたことがある。住んでいる階数、部屋の値段、夫の職業、年収、子供の成績――。この建物では、付き合いがある人たちの間でありとあらゆる情報が筒抜けとなり、比較の対象となるのだ。誰も表立って口には出さないが、誰が上で、誰が下かという序列は明確にある」
これは、タワマン文学『息が詰まるようなこの場所で』(KADOKAWA)にある一節だ。「タワマン」とは、一般的には20階以上、高さが60メートルを超える超高層マンションを指す。そこでは、一つの建物の中に“階級”があり、それを物差しに見上げられたり、見下ろされたりする……、おそらく多くの人にとっては非現実的な話だろう。だが、この作者は、実際にタワマンに住んでいる医者の知人に取材して得た情報をつなぎ合わせて書いた側面もあると言う。
「“マンションクラスタ”のネタとして見る分には楽しいが、本気でそれを信じているのは残念なことだと思う。タワマンはただの住居であって、それ以上でもそれ以下でもない」
盛り上がりを見せるタワマン文学にドライな反応を見せるのが、フリーで働くエンジニアの男性(43歳・都内中堅私大卒・年収2800万円)だ。渋谷駅近くにそびえ立つ、築7〜8年のタワマンに恋人と3年ほど住んでいる。
「私が住んでいるマンションでは、マウンティングのような行いは確認できていない。もちろん、他の住人やファミリー層とは挨拶もするし、何階に住んでいて何の仕事をしているとかまで知っている。ただ、プライバシーを重視した建物なうえ、タワマン文学に描かれているようなパーティールームで交流会をするほどお互い干渉しない」
作品の舞台と同じ、湾岸エリアのタワマンに住んでいるコンサルティング会社を経営する男性(35歳・東大卒・年収3000万円)にいたっては、他の住人と「ほぼ交流がない」という。
「高層階行きのエレベーターと低層階行きのエレベーターに分かれているので、逆側の人の情報なんて全く知りません。もし同じエレベーターに乗り合わせても、挨拶はしますが、部屋番号も名前さえも知りません」
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