爆破テロの被害を受けた家族の声

実はこうした状況は、テロの現場や戦場ではよくあることです。家族の遺体を撮ってほしい。これほど残酷な殺され方をしている様子を。また、お葬式の最後のあいさつをしている、家族が泣きじゃくっている様子を撮ってほしいと言う。

僕には撮ることができない、と言って外に出ていると、手を引っ張りながら頼みこまれる。そして、どうか世界に、そして日本に配信してくれという。

彼らはただ、知ってほしいのです。これが今起きているテロや戦争の現実、犠牲になっている現場そのものなのだと。次のページの写真は、パキスタンの病院で撮影したものです。2007年7月、首都イスラマバードでイスラム教の神学生が治安部隊と衝突し、イスラム教の礼拝所モスクに立てこもる事件が起こりました。パキスタン軍によると、この戦闘によって40人以上の死者が出たといいます。

パキスタンの病院で撮影した子どもを亡くした家族の写真
撮影=渡部陽一
パキスタンの病院で撮影した子どもを亡くした家族の写真

子どもを亡くした家族の写真

神学校を率いる指導者は、アフガニスタンの過激派組織タリバンとの関わりがあったため、この事件がタリバン側の強い反発を呼び、報復のための自爆テロなどが激化しました。

この写真は、報復による爆破テロによって子どもを亡くした家族の写真です。自分の子どもが犠牲になったことを確認して、我を忘れてしまった状態です。この病院には、爆破テロの犠牲になった一般市民が多数運び込まれていました。とても残酷で悲しい場面でした。

日本で暮らしている人の感覚であれば、こうした極限状態のときは、ふつう、写真を撮らないでほしいと思うものです。しかし、彼らもやはり「伝えてほしい」「こうしたテロの悲しい状態を、日本に暮らす人たちにも届けてほしい」と訴えていました。

「傷ついた私たちを撮って」
「亡くなった子どもを撮って」

こういう声を聞くと、胸が締めつけられるような気持ちになります。

世界のさまざまな、自由を奪われた戦場の現場で、日本に向けて「知ってほしい」と呼びかけている人がいることを、僕は写真を通じて伝えていきたいと思います。

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