認知症にならないために必要な「2つ」とは
新型コロナがなくなることはない。症状は軽くなったが、リハビリ病院にいる患者がうつったら、命に関わる。そこで、ねりま健育会病院では今でもお見舞いはコロナ検査後でないとできない。病院に入っていくにはマスクをして、検温しなくてはならない。
しかし、リハビリはすすめている。
彼は「リハビリの後のことも考えています。まずは回復すること。少しでも回復すれば何かができる」と言っている。
「当院では回復期に入ったら、アドバンス・ケア・プランニングをします。今後どうやって、どこまで回復して、どういう人生を送るかを考えていただき、計画する。今後、どう生きるかを考える。認知症であっても、杖をついていても、車いすでも、近く命に関わるような病気であっても前を向く」
私たちのやることはそれですと彼は断言した。
わたしが聞いたのはひとつだ。
「認知症にならないためにやることはありますか?」
彼は「月並みですけれど、健康に気をつけること」と答えた。
「食生活、体重をコントロールして動くこと、これが基本です。あとですね、心の健康も考えなくちゃいけない。心の健康のためには、睡眠と日中覚醒のバランスです。夜はしっかり寝て、昼間は屋外に出て誰かと話して活動する。時間が短くても。それをすることによって、精神というか心が健康になります。この二つをちゃんとやったうえで、あとは自分で学ぶしかない」
健康な時こそ、医師の話を聞いたほうがいい
「人って面白いのですが、健康な時よりも病気の時の方が医師や看護師の話を真剣に聞くんです。医師が言ったことを守る瞬間とは、自分が病気になった時だけなんですよ。よく不祥事があった会社の社長が出てきて、『会社を変えます』って言うでしょう。あれは不祥事の時だけ。儲かっている会社の社長が出てきて、『明日からうちの会社は変わります』って言いますか?
それと同じで健康な時、人は医師の話を聞きません」
確かに、おっしゃる通り。
「では、人は日ごろから医師の話を聞くべきですね?」
酒向は明確に言った。
「そうです。健康な時にこそ素直になって医師、看護師の話を聞いて自分で考えることです」
リハビリの権威、酒向がやろうとしているのは病気を治すことだけではない。健康な人には素直になって健康を考えてもらう。認知症の人には幸せになってもらう。
*付記
わたしの母は世田谷記念病院を退院して、自宅で暮らしていた。怒ることはなくなった。
コロナ禍で骨折してねりま健育会病院に入ったが、回復して退院した。今は自宅近くの特別養護老人ホームに入所している。