部下に自宅で本を読ませる

次の実例に出てくる人たちは、もう少しシリアスに悩んでいます。

人事部の管理職で、いつも社長に近いところで働いている人の話です。

あるとき、社長がボランティアの清掃活動に目覚めてしまい、その人は毎週日曜日の朝、他の管理者数人と一緒に、清掃活動に駆り出されているというのです。

イヤな顔は見せないように付き合っていたのですが、自家用車を運転して清掃の現場へ行ったら、社長にひどく咎められました。「環境にやさしい活動をしているのに、なぜ車を運転してくるんだ。電車で来なきゃダメだろ」と言われたそうです。

まさか、これで会社を辞めようと考えたりはしないと思いますが、実に憂鬱ゆううつになっている様子でした。

私が行為者(理不尽なことを強要する側の人)に対して、止めたほうがよいと何度も助言をした例もあります。

ある企業で私の受け持っている研修を担当してくれていた女性社員が、研修でテキストとして使用した書籍を異常に気に入ってしまい、それを研修の受講対象者ではない、まだ10代の部下に自宅で読ませ、感想文を書かせてきたのです。そして、それを私にも読んで、評価してほしいと言います。

この女性社員は、おかしなスイッチが入った状態になっていました。

部下に自宅で本を読ませるのも、感想文を書かせるのも、不払い残業に相当するもので、私も感想文を読むことを仕事として請け負っていたわけではありません。

しかし、当人は他の若い社員にも「読ませたい」と言って、うずうずしているのです。狙われていた社員は、どうやら上司が守ってくれているようでしたが、感想文を書かされた部下は、相当にイヤな思いをしたのではないかと思います。

図書館で積み上げられた本の横で頭を抱えている女性
写真=iStock.com/champpixs
※写真はイメージです

理不尽なことは昔も今も変わらない

「様々な理不尽をどう乗り越えるか」は、私たちに永遠につきまとうテーマです。

野球少年だった近所の子供が、中学1年になって野球部に入りましたが、その中学校の野球部では、1、2年生はグランドの整備や球拾いしかさせてもらえず、野球部なのに野球ができないという理由で、早々に退部してしまいました。

これは私が中学生のときに体験したことと、まったく同じです。私としては、あれから40年以上経っても、同じことが行われていることに驚きました。

同じことが続いているということは、同じことを下級生にさせる人たちが存在し続けているということです。

私は当時、自分は同じことを下級生にさせることなどできないと思っていましたが、そうは考えない人のほうが多いのです。