母親が大事にした聡太の新幹線での「ひとり時間」

藤井聡太の名言

(原動力は)やはり、『将棋が好き』ということだと思います。幼い頃からずっと好きで自然にやってきた感じです。将棋を指したくないとか、駒に触れたくないなどと思ったことはないです。

(『考えて、考えて、考える』丹羽宇一郎・藤井聡太著、講談社)

藤井聡太は5歳で将棋を始め、以来、数々の史上最年少記録を更新し、今や8冠を獲得と、若くして将棋界のトップに立ったわけですが、なぜこれほどの短期間でこれほどの偉業を成し遂げることができたのでしょうか。

「その原動力は何だと思いますか」と聞かれ、こう答えています。

「やはり、『将棋が好き』ということだと思います。幼い頃からずっと好きで自然にやってきた感じです。将棋を指したくないとか、駒に触れたくないなどと思ったことはないです」

駒が並べられた将棋盤
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

ずっと将棋が好きでいられた理由の一つとして挙げているのが、「家族の接し方に救われた」

というものです。こう話しています。

「対局で負けた時も、母は『なんで負けたの?』と言うことはなく、普段通りに淡々と接してくれました。母に限らず家族が、結果を受け流してくれたことは自分にとって良かったです。(結果は)本人が一番気にしていますから」

将棋というのは引き分けがなく、勝つか負けるかのどちらかしかありません。しかも、チームではなく一人で戦うだけに、勝つも負けるも自分次第となります。天候などの運や偶然にも影響されにくいと言われています。

藤井は10歳の時から地元・愛知から大阪の奨励会まで新幹線で通う生活を送っています。中学からは1人で通っていますが、それまでは母親が付き添っています。将棋会館は付き添いは三階より上に入ることはできず、母親は藤井の対局が終わるまで二階のベンチで待つだけでした。

奨励会時代、藤井は連敗を喫し、大泣きしたこともありますが、藤井によると、母親は対局で負けた時も、「なんで負けたの?」と言うことはありませんでした。スポーツでも勉強でも子どもに付きそう親はたくさんいますが、その結果に一喜一憂し、勝てば喜ぶものの、負ければ「どうしてダメだったんだ?」「なぜあのチャンスを逃した?」などと質問攻めにする親も少なくありません。

一方、藤井の母親は新幹線に乗っている時の藤井の「ひとり時間」を大切にして決して邪魔をしなかったといいます。勝っても負けてもそれを自分一人で引き受けてこそ強くなることができます。藤井は親や監督、コーチに叱られながら無理やりやるのではなく、自分が好きな将棋を自分で考え工夫しながら研究することで強くなっています。その原動力は何より「将棋が好き」だったのです。

★ワンポイント 「好き」こそが上達し強くなっていくための最大の原動力。