地域によってはクマに対する意識の差が浮き彫りに

米田氏も「里に降りてくるクマには順番があり、まずは若いクマ、次に親子グマ、最後に大型のオスグマが現れる。体重が100キロもある大グマに襲われると死亡事故に至るケースもあるため、樹になっている果実を埋めるなどして家にクマを近寄らせない対策をしていくことが必要。また襲われた時に頭や首を守り、致命傷を負わないように意識することも大切」と警鐘を鳴らす。

23日、秋田県の佐竹敬久知事は県が定める上限数にこだわらずにツキノワグマ捕獲を進める方針を打ち出した。11月1日から解禁される一般狩猟では、「見つけたらすぐに撃つことを徹底する」と、猟銃の弾丸費まで支援することを明らかにした。

一方で、作業小屋に立てこもったクマ3頭を捕獲、駆除した秋田県美郷町には苦情や抗議の電話などが100件以上寄せられるなど、被害のある地域とそうでない場所でクマに対する人々の意識の差が浮き彫りになっている。

大量駆除で再びツキノワグマが絶滅の危険に晒される恐れも

米田氏は、「今後、クマの大量出没は常態化していくだろう」と予測した上でこう語る。

「ここ4、5年はクマの捕獲数が増加しているものの、ハンターの高齢化や人手不足もあり、駆除が追いつかない。国が定める捕獲数の上限は推定生息数の12%だが、これを達成できないと鹿やイノシシのように個体数の増加に歯止めが利かなくなる。特に今年は観察してきた中で出産数が過去最多だったため、2年後、再度大量出没する可能性がある。かといって大量駆除に動いては、再びツキノワグマが絶滅の危険に晒される恐れもあり、注意が必要だ」

関東の山で狩猟生活を送る俳優の東出昌大氏(35)はこう語る。

「今年は私の住んでいる山も夏が長く、キノコが全然出てこないし堅果類の落果も不作になるでしょう。クマの出没件数、人的被害が例年より増えている東北地方では、ブナの実が『凶作』と発表されました。果たして人間が気候変動に与えた影響が無いと言えるのだろうか?と感じます。

田舎では人間の数が減り、耕作放棄地が点在するようになっていることから、獣が生息できる環境は増えるのではないかと推測される。今後、クマによる人身事故が、1件でも増えて欲しくないと切に思うと同時に、『クマは危険』の報道が過熱し、無闇にクマを迫害する風潮が生まれない事を願います」

クマと人間の共存の道はあるのか。従来の対応策を見直すべき時が来ている。

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