「振り上げた前足の爪で脳天を引っかかれた…」列島を襲う“ニュータイプ熊”アーバンベアの恐怖《絶滅したはずの伊豆、ついに都内にも出現》(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)

全国でクマの被害が多発し、過去最悪の件数となっている。22日の時点で死傷者数は158人に達し、すでに過去最も多かった2020年の記録に並んだ。

「午前中に近くの山でキノコ採りをしていたらドタドタと音がして、顔をあげると目の前にクマが迫っていました。興奮状態なのが見てとれたので、咄嗟に目を逸らしたのですが、振り上げた前足の爪で脳天を引っかかれました」

そう振り返るのは、17日に秋田県大館市でクマに襲われ、30針を縫う怪我を負った80代の女性。Uの字にぱっくりと割れた傷口からは白い骨が覘いたという。

秋田県では全国最多の52人もの被害が

「クマ鈴もつけていたし、ラジオも流していたのですが、きっとクマも餌を探すのに夢中で私に気が付かなかったんでしょう。遠くに見つければ対処のしようもありますが、急に襲い掛かられては何もできなかった。体長1メートル前後の若いクマだったから助かりましたが、親子連れや大きなクマが相手だったらどうなっていたか……」(同前)

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秋田県では全国最多の52人もの被害が出ており、19日には北秋田市の住宅地で中高生2人を含む5人が1匹のクマに立て続けに襲われる事件も起きた。

どこで襲われるかわからず、外出を控える人も増加

北秋田市阿仁打当で代々マタギの家に育ち、打当マタギのシカリ(頭領)を務める鈴木英雄さん(76)は、「今までにない、とんでもないことになっています」と驚きを隠せない。

「毎日のように人里近くの罠にクマがかかっている。北秋田市でこれまでに200頭近くが捕獲されています。昔のマタギの感覚では、クマは人前に出たり、開けたところでは行動しないものでしたが、今年は車や人通りの多い場所に、まだ明るい時間から現れている。人が近づくと逃げるので、人間が『怖い』ということは分かっているはずなんですが、食べるためにそうせざるを得ないのか、クマの性質が変わってきているのか……」

前出のクマに襲われた女性も、「50年暮らしていますが、今まで出なかった場所にクマが出ている。どこで襲われるかわからず、外出を控える人も増えている」と話す。