逆転勝訴なら多くの被害者が救われる道が生まれる
高額な献金をした人ほど、教団側に念書を書かされ署名させられているケースは少なくないと思われます。実際に、前出のAさんも同ヒアリングのなかで「脱会後に、弁護士さんの助けを借りて、統一教会との交渉によって今年(2023)年の8月に示談して、返金されました(筆者註:2500万円にプラス慰謝料300万円で請求)。そして統一教会に言われるままに差し出した『返還請求を行わない』という念書も戻ってきました」と話しています。
このAさんの事例を踏まえ、山井議員は次のように述べています。
「岸田首相は(国会答弁で)逆に『念書は悪質性、違法性の要素になる』とおっしゃいました。その後、念書を書かされながらも、返金されたのがAさんのケースです。さらに、もし中野さんの裁判が今後、最高裁で逆転勝訴となり、ここで念書無効となれば、、全国で泣き寝入りしている人たちの高額献金が戻ってくる可能性がある。大変なシンボリックな話で、統一教会が恐れているのは、解散命令請求と念書無効という流れになることではないか」
こうした事例を通じて、多くの読者の方が改めて感じるのは統一教会への献金のあまりの高額さでしょう。Aさんや、中野さんの母親のケースのように、お金が本人になくなっても、家族にあることがわかれば、教団はそれを狙ってきます。そして本来のお金の持ち主である本人に了承を得ないままに、献金をさせる仕向けていると考えられるのです。
加えて、先祖の救いや霊の恐怖などを信じ切った人に、教団は委任状偽造書類を作るなど、社会通念上、絶対やってはいけない方法まで平気で使っています。今後も、こうした事例が全国で明らかになってくると思われますが、他にどんな手法が使われてきたのか、一人ひとりの詳細な状況をみることで、その手口の悪質性をつまびらかにしなければなりません。
前出・中野さんの最高裁の判決が出る時期は未定ですが、その内容によっては、泣き寝入りを強いられている人たちの高額献金が戻ってくる可能性があり、今後、多くの被害者が少しでも救われる道が生まれる。そんな重大な局面を迎えるだけに、今後の司法における、解散命令と念書問題の判決の行方に注目が集まることになります。