※本稿は、長谷川拓哉『愛犬の健康寿命がのびる本 うちの子がずっと元気に暮らす方法』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
飼い主は犬の水分不足に気づかない
飼い主のみなさんには、飼っているワンちゃんの水分が足りていない、という認識はあるでしょうか。
「犬だって喉が渇いたら自分で水を飲むから問題ない」
「動物の本能で、水を飲まないときは体が欲していないだけ」
などと思っている飼い主さんもいるかもしれませんが、経験上、水をあまり飲まないワンちゃんはとても多いのです。
たくさん運動して、喉が渇いて水分を欲して自ら飲む、という状態が理想的ですが、毎日そんな状況をつくるのは難しいでしょう。
普通に生活して、散歩をしているからといって、水を必ず欲するかというと、そうではありません。
犬からすれば、「水分が足りていない」などという自覚はもちろんありません。
水分が足りなくても若い犬であればなんとかなりますが、高齢犬になると、体力も落ちてくるため、水分不足の影響が出てきやすいのです。
シニア犬が注意すべき「隠れ水分不足」
高齢犬の病気の9割は「隠れ水分不足」が原因。とくに8歳以降のシニア犬には「隠れ水分不足」が多く、水分摂取はとても重要です。
人間でも高齢者になると熱中症で倒れる方が増えます。
圧倒的に体内の水分が足りていないのに、「喉が乾かなかったから全然水を飲んでいなかった」というケースも多いようです。犬も同じなのです。
私は普段、自分のクリニックのほかに夜間救急の動物病院でも診ています。
ある夜のこと、中型の雑種のワンちゃん(12歳・オス)が痙攣を起こしたということで受診に来ました。
高齢だったこともあり血液検査をしましたが、内臓には問題がありませんでした。
ただ、血液検査で循環が悪いことがわかったので、飼い主さんに水分摂取について聞くと、「普段からあまり水を飲みません」と言います。