例えば、パナソニックのノートパソコン「Let's note(レッツノート)」は仕事で使うモバイルパソコンという、従来にはなかったカテゴリーに焦点を当てて人気を博している。もはや軽量で耐久性が強く、バッテリーの駆動時間が長いビジネス用のモバイルパソコンといえば、レッツノートが消費者の頭にすぐ浮かぶようになっている。
このように自社が先頭を切れるカテゴリーを創造することがマーケティングの基本的な課題であり、すでに圧倒的なナンバーワンが存在するカテゴリーに食い込もうと考えるのは馬鹿げている。そう指摘したのがアル・ライズである。
大西洋を最初に単独横断飛行したリンドバーグの名前は誰もが覚えていても、二番目に単独飛行した人の名前はほとんど覚えられていない。つまり、一つのカテゴリーの中にいくつもの名前は人の頭には入らない。従って、他に優っていることより、まず先頭を切ることのほうが大切というのがライズの主張である。
では、あるカテゴリーで先頭を切れなかった場合はどうしたらよいのか。ライズはその答えとしてアメリア・エアハートという女性の名前を挙げる。日本での知名度は低いが、初めて大西洋単独横断に成功した女性として米国では有名な人物だ。
つまり、「大西洋単独横断」というカテゴリーでは覚えられないが、「女性の大西洋単独横断」という新しいカテゴリーをつくったがゆえに、アメリア・エアハートは永遠に名前が残るようになったというわけで、マーケティングの極意もここにあるとライズは説いている。
既存の製品カテゴリーを超え、新たなカテゴリーを創造せよ。そう言われても多くの経営者はピンとこず、どうしても自社製品やその性能の改良にこだわり、既存の製品カテゴリーのトップ企業を追いかけてしまいがちである。