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J.フロントリテイリング会長 奥田 務(おくだ・つとむ)
1939年生まれ。慶應義塾大学卒。64年大丸入社。97年大丸社長。2003年大丸会長兼最高経営責任者。07年J.フロントリテイリング社長兼最高経営責任者。10年会長兼最高経営責任者。


 

大丸、松坂屋を運営するJ.フロントリテイリングは、ファッションビル大手パルコに対してTOBを実施、8月に発行済み株式数の65%を取得して子会社化した。「従来のやり方では百貨店は駄目になる。枠にとらわれない新しいビジネスモデルを構築する」と以前から強調してきた奥田務会長。パルコを傘下に収めたことで“脱百貨店”経営が一歩前に進む。

奥田氏が大丸社長に就いたのは1997年。トヨタ自動車の奥田碩社長(当時)を兄に持つ毛並みの良さが注目されたが、有力後継者と目されていた専務を降格させ、若手の奥田務氏を抜擢させた人事を「創業者一族を再びトップに戻すまでの中継ぎ」と評する向きもあった。だが、奥田氏は大丸の経営効率化に取り組み、こうした見方をはね返す。たとえば、販売の仕事の大半を占めていた倉庫整理や管理業務などを派遣社員らに任せ、接客や新規顧客の獲得に社員を注力させるといった仕事の見直しとコスト削減を徹底。大丸で確立した高利益体質を松坂屋に移植すべく、両社の統合で2007年にできたJ.フロントの社長に就任した。

昨年改装・増築した大丸梅田店は脱百貨店経営の象徴的な店舗だ。人気ゲームのグッズを販売するポケモンセンターや東急ハンズ、ユニクロなど従来の百貨店イメージとは異なる人気専門店を幅広く集め、新たな家族客の呼び込みに成功した。こうした奥田氏の取り組みについて、大手流通グループ首脳は「百貨店業界でナンバーワンの経営手腕」と絶賛する。今後、奥田氏は若者に人気のあるパルコのノウハウを大丸、松坂屋にどのように導入するのか。J.フロントとは真逆に百貨店ならではの強みをひたすら追求する三越伊勢丹ホールディングスをはじめ、関係者は固唾をのんで見守っている。

(PANA=写真)
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