中国人の土地購入が「国防の危機」になることはない

日本の不動産を爆買いしているのは中国人だけではない。北海道のニセコなどはオーストラリア人のスキーヤーやスノーボーダーたちに大人気で、外国資本ががんがん投入されている。

多くの日本人はそうした西側諸国の資本による不動産取得には好意的だ。ところがこれが中国人の手によるものになると一転して身構える。「日本が危ない」「国防の危機だ」などと恐怖心をあらわにするのだ。

そのように騒ぐ人たちの常套句はこうだ。「中国には国防動員法がある。有事の際には日本の土地が中国に国有化される」「国防動員法によって有事の際には国内外の中国人は軍事動員される。中国人が買収した土地がその拠点になる」といった調子だ。

でもそんなわけはない。中国人や中国企業が日本の土地を取得してもできることなんてたかが知れている。

かりに国防動員法によって日本の土地が中国のものになったとしよう。だが、それは日本にある、日本の土地であることに変わりはない。統治権は日本にあるのであり、中国から離れた日本の土地を、中国政府が支配することはできない。

あるいは、中国人や中国企業による自衛隊基地周辺の土地取得を危惧する人もいる。「自衛隊基地の近くの土地を購入し、工作活動を行っている」というような主張だ。だが、そもそも基地の近くに土地を所有して得られるような情報は、衛星データなどを使えば手に入る。自衛隊の機密情報を得ようとするならば、サイバー攻撃を仕掛けたほうが手っ取り早い。

加えて本当にそのような工作活動が目的なら、借地でもできる。なんなら、借りなくとも隣接地に忍び込めばいいだけだ。

「中国人や中国企業による水源地の買収」を不安視する人もいる。でもそれのなにが問題なのだろうか。たしかに世界的に水不足が叫ばれているが、そう簡単に日本の水を中国に運べるわけではない。中国人もしたたかなので、世界的に水不足になること、そして水源地の価値が上がることを見越して、土地を購入しているだけだ。

今後水不足になって水源地が必要になれば中国人から買い戻せばいい。いざとなれば、日本の法改正を行い、外国人による水源地の利用を制限することだって可能だ。

そもそも「中国人だから水源地を杜撰にあつかう」「日本人なら安全」というわけでもない。水源地にゴミの不法投棄をする日本人の不届き者もいるではないか。

なかには「日本の水源地を取得し、中国人が毒をまこうとしているんだ」などとトンデモ論を抜かす人もいる。万が一、本当に毒をまこうとするならば、わざわざ土地を購入する必要なんてどこにもない。

二束三文の土地を高値で買い取ってくれている

冷静に考えてほしい。中国人が日本の土地を購入するときには、購入代金だけでなく、さまざまな手数料や税金が発生する。単価が高いぶん、消費税だって大きい。購入したあとには固定資産税も発生する。

自衛隊基地周辺や水源地、離島などは、日本人も買わないような二束三文の土地も多い。そんな土地を中国人が買ってくれ、しかも税金まで支払ってくれるのだ。

「原野商法」という悪徳商法がある。これは原野や山林など価値のない土地を「将来的に高値で売れますよ」と勧誘する手法だ。

堀江貴文『2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全』(徳間書店)
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いまの中国人による土地の爆買いは、日本としては騙しているつもりはなくても、本来は二束三文で日本人すら手を出さない土地を、中国人がわざわざ高い金を払って買ってくれているとも言える。大いに買ってもらえばよいではないか。

今後、中国人をはじめとした外国人による日本の土地買収はさらに加速していく。

それを国家の危機だと不安を煽るのはナンセンス。不安を煽るのではなく、むしろ「この島は風水的にすばらしいパワースポットと呼ばれている」などといったストーリーづくりに精を出し、さらに高値で買ってもらう努力をしたほうがいい。

ただでさえ国内経済が縮小していくのだから、日本人は商売人としてもっとしたたかになるべきなのだ。

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