「うれしい」「楽しい」「気持ちがいい」を味わえたか
「いい夏休みの過ごし方を教えてください」
「夏休みには何をするといい気分転換になりますか?」
と産業医の私はよく社員に聞かれます。
正直なところ、「夏休みに日頃のストレスや疲労を回復するためには絶対○○をするといい」などの答えはありません。
夏休みで大切なのは、何をしたかよりも、うれしい、楽しい、気持ちがいい、すがすがしいなどの感情を味わえたかどうかです。このような感情をたくさん味わえた人は、夏休みがいい気分転換となり、日頃の生活の緊張感を区切る休み方ができたのだと思います。その結果、日頃のストレスから解放され疲労も回復し、夏休み明けに健康的に過ごせている人が多いと思います。
私は秋の産業医面談では、「夏休みどうでしたか?」と、よく社員たちに聞きます。
往々にして、秋も元気な社員たちは夏休みについて、楽しかった、充実した、気持ちよかった等々、感情を表す言葉をまず言い、それから実際にやったことや行った場所などについて教えてくれます。
五感に刺激を与えて緊張感を「切る」
働く人の多くは、職場の人間関係や仕事の質や量など特定のストレス原因がなくても、無意識ながらも日々緊張感を持って働いて過ごしています。この緊張感が強くなりすぎると自律神経のバランスを壊したり、メンタルヘルス不調になったりしてしまいます。
このような緊張感に上手に対処するためには、自分の緊張した気持ちを弛緩(リラックス)させる必要があります。気持ちの緊張感を切ると言うことで、私はこれを「区切る」と言っていますが、平たく言うと気分転換です。
気分転換をどのようにやるか難しく考えずとも、私たちは日頃から職場や家で、自然に日常生活に取り入れているものです。人間の感情は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感に大きく影響を受けています。私たちは、意識せずとも何かをすることによって五感を刺激し、それを通じて緊張感を和らげられています。
たとえば、壁にかかった絵画や観葉植物を眺める(視覚)、音楽を聴く(聴覚)、アロマをたく(嗅覚)、甘いものやエスニック料理を食べる(味覚)、お風呂につかる(触覚)などの行為を通じて、緊張を和らげたり、気分を変えたりするというのは、多くの人が無意識にやっていることです。