単なる「あいのり」リブートではない

そうなのだ。『あいの里』は決して、過去の栄光にすがっただけで人気を得たわけではない。平成11年から21年までフジテレビで放送された『あいのり』を当時企画した西山仁紫プロデューサー自ら携わってリブート版として今回の『あいの里』が作られ、発信されるメディアは移り変わってNetflixで独占配信されているわけだが、中年コンテンツに合わせて絶妙なアレンジが施されている。

番組を象徴するピンクのワゴンはピンクの鐘に変わり、また真実の愛を探し旅に出る代わりに、「ラブ・ヴィレッジ」と称する共同生活場所で古民家をDIYしながら地に足をつけた田舎暮らしを繰り広げていくのだ。告白に成功すると誕生したカップルがキスをするルールや、スタジオトークでタレントのベッキーが再び起用されるなど、かつての『あいのり』ファンを意識した要素も残っているが、中年による中年のための恋愛コンテンツとして確立させ、番組ブランドに頼りすぎていない印象が強い。

参加者は「ラブ・ヴィレッジ」にある古民家で自給自足の生活を送る
写真=Netflixリアリティシリーズ「あいの里」独占配信中
参加者は「ラブ・ヴィレッジ」にある古民家で自給自足の生活を送る

過去を活かすべきポイントは裏側の制作ノウハウ

過去に成功した番組がリブートされることはよくあるが、単なるリブートに終わらせず、過去を活かすべきポイントは裏側の制作ノウハウだったりする。リアリティ番組の場合、最も重要なのは参加者の人選力にあり、『あいの里』の参加メンバーの顔ぶれはさすがと言えるもの。ほどよく身近さを感じさせる人選だ。

女性陣は45歳のシングルマザーに、39歳のコンビニ店員、子育てを終えた60歳の方など。モテる女感が漂う36歳のヨガインストラクターも登場する。一方、男性陣は30代も40代も仕事に没頭し過ぎてか独身貴族が多めで、50代と60代は昭和ノリが濃い。そして、男女共にバツがあったり、なかにはパートナーに先立たれた過去を持ちながら、人生最後の相手を探すため必死の姿をみせてくれる。

編集力でひとりひとりの個性までわかりやすく、新たに投入される参加者によって、新たな化学反応を期待させる作りも憎い(カップルが成立したり、告白に失敗したりすると、参加者はラブ・ヴィレッジを去るルールがあるため、そのたびに新たな参加者が加わる)。『あいのり』で10年もリアリティ番組を続けることができた制作力があるからこそ為せる業だ。

参加者の選考基準は「素の真剣さ」

選考経緯について西山プロデューサーが「一般の方、俳優やエキストラなど演技経験のある人がいましたが、職業問わず、素顔で真剣に恋をしようとしている人にぜひ参加してもらいたいと思いました」と語っているように、全員が全員カメラの前に立つのが初めてではないが、そもそも番組の目的は素人らしさを映し出すものではない。素の真剣さに尽きる。だからこそ白けさせないのだろう。

気づけば、イントロでかかるバックストリート・ボーイズの懐かしいヒット曲『Everybody』が頭から離れなくなるほどハマらせもする。『あいの里』は参加者が相手を見極めていくプロセスにも面白さがあるからだ。そこには中年コンテンツらしい深さがある。