シンプルでロジカルな文章は、実は理数系人間が得意とするところ。新発想の文章術をプロが指南。まずは長文との決別から始めよう。

鎌田浩毅式文章術

京都大学大学院
人間・環境学研究科教授
鎌田浩毅

1955年、東京都生まれ。東京大学理学部卒業。専攻は火山学。学生からの講義の評価は教養科目の中で1位。著書に『中学受験理科の王道』『一生モノの勉強法』『火山噴火』など。

文書に数字や図表といったデータを入れ込む場合は、数字や図表がなくても意味がわかる文章を書くことが先決です。ときどき数字や図表が唐突に登場した印象を与える文章を見かけることがあります。それは文章ありきで構成を固めていないからです。個条書きでもいいので、一度、文章で表現してから数字や図表で代替すると、読み手にもデータの位置づけが明確に伝わるはずです。

データは見せすぎに注意です。手持ちのデータをすべて見せる必要はありません。量が多くなるほど、読み手にデータの読み取りを強要することになります。年別の統計を使うなら、10年ごとにまとめてみたり、強調したい年だけ抜き出して見せるのもいいでしょう。

抜き出して見せる部分は、3つが理想です。たとえば「2000年に100人」という数字だけでは、比較対象がなく、数字の持つ意味が不明瞭です。しかし、「2005年に200人」と加われば、増加傾向が浮かび上がり、さらに「2010年に300人」で、同じペースで増え続けていることがわかります。データは一つだけを抜き出しても意味が伝わりにくく、多すぎても読み手に負担をかけます。読み手に論旨を伝えるという条件を満たしつつ、どこまでデータを絞り込むか。ここが腕の見せどころです。