経済や行政の分野で30代リーダーが目立ち始めている。運命論者で行動主義者。そして、国の先行きに強い危機意識を持っている。彼らは日本の将来をどう見ているのか。
若者に希望を持たせよう
ここにもう一人、「実行」を得意とする30代のリーダーがいる。岩手県陸前高田市副市長の久保田崇だ。
陸前高田市は中心市街地のことごとくを大津波に持ち去られ、市職員も295人中68人が亡くなった。市役所庁舎は使用不能になり、いまは丘の中腹にプレハブの仮庁舎を構えている。久保田の執務室はその仮庁舎にある。
もともとは内閣府のキャリア官僚。ニート対策など、若者の社会参加を促す仕組みづくりを手がけ「子ども・若者育成支援推進法」の制定などに関わった。その久保田が被災地のど真ん中で働くようになったのは、ちょっとした縁のつながりからだ。
11年5月、東京都内に佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長など全国の首長ら30人ほどが集まり、被災地支援について話し合った。被災自治体にも参加を呼びかけたが、都合がついたのは陸前高田市の戸羽太市長だけ。必要な支援は何か、現地では何が不足しているか。首長らの問いかけに、たった一人で上京し疲労困憊の戸羽は答えた。
「とにかく一度いらしてください。ひどい状況で、何が足りないのかも私たちにはわからない」
すべてはそこから始まった。久保田は休暇を取り、現地へ向かう首長たちに同行した。職務とは関係なく、何らかの現地支援ができればと考えたからだ。しかし、直後の6月上旬に意外な要請が届く。「副市長になってほしい」というのである。内閣府の先輩である樋渡のお膳立てだった。