ストはなぜ日系企業に集中しているのだろうか。たとえば中山市で5月から6月にかけて発生したストライキは日系企業6社に対し、ドイツ、シンガポール、スイス、台湾系などの他国・地域の外資系は合わせて5社。日系への集中率は確かに高い。

この理由について広州市のホンダ完成車工場で働く従業員(23)は「日系の自動車工場の賃金は独系ワーゲン社などと比べても賃金が低い。ホンダの場合は研修生をなかなか正社員にせず賃金を低く抑えてきた」と語る。また広州の中国民営工場の従業員(23)は、「日系自動車関連企業は機械系高専学校に直接求人募集をかけて新卒ばかりを採用する。新卒はほかの職場を知らないから工場の待遇に不満を持ちやすい」という。

広東省深せん※市で久保田式経営塾を開く日系企業向け労務コンサルタントの久保田昭夫氏(68)は「日系企業は、中国人の経営幹部抜擢が欧米系企業より少なく、経営者と従業員との風通しが比較的悪い」と指摘する。※せん=土の右側に川

潜在的な反日土壌があることも忘れてはならない。南海本田のストでも、首謀者として解雇された元従業員の譚国成氏が香港誌「アジア週刊」のインタビューで「抗日運動の要素があった」と述べる。日系企業のストライキの連鎖は05年にもあったが、このときも北京や上海で吹き荒れた反日デモの影響があった。

ただ、この時期、遼寧省・大連経済開発区の十数社で連鎖的に起きたストは大連市当局の介入で解除され、労働者側に逮捕者も出ている。だが08年以降に日系企業で発生するストでは当局が介入しなくなってきた。

背景には新労働契約法が施行され、労働者の権利擁護を胡錦濤政権が掲げるようになってきたことがある。広がる格差、住宅も買えないほど低く抑えられてきた賃金水準に対し、労働者の不満がそろそろ臨界点に達し、ガス抜きが必要になってきたのだ。特に広東省の汪洋書記は、08年の段階で「賃金倍増計画」を打ちだしており、労働者の賃上げ要求を肯定してきた。

こういった空気がありながら、09年にはリーマンショックの影響を理由に賃上げが行われなかったことで、今年に入りストが急増。とはいえ、河南省平頂山市の平綿紡績集団で5月末に起こった5000人規模のストでは、公安当局が介入して解除、従業員側に4人の逮捕者が出ている。

当局も中国企業にまでストが広がることは望んでいないため、6月半ばからは報道規制をかけるとともに各地で最低賃金を引き上げ、「工潮」の鎮静化に努めている。

ただ、ストの成功率という点では、中国企業よりも外資系、さらには社会やメディアの支持を得やすく妥協しそうな企業――すなわち日系企業が狙われる傾向となるのだ。