フロアの規格ごとに最短の順路をマニュアル化すると、どのスタッフでも均一の手順で掃除がすむことがわかった。その結果、従来は開店前の1時間を費やしていた作業が半分の30分に短縮された。実に2倍もの生産性の向上に繋がったわけだ。
「全836店舗の人件費が30分×365日分削減すると、年間で大体1億円という試算になりました。自分たちの作業改善によるコスト削減は、売り上げとは無関係。仮に売り上げが下がったとしても、損益分岐点そのものが下げられれば、企業として利益が上がる体質になっていきます」
店舗のスタッフ数が少ないのも同チェーンの特徴だが、それも生産性向上の結果だ。フロアの仕事量を移動距離×時間で算出し、必要最低限の人数を配置する。トレーを使わず皿を手で運ぶのは、手ぶらの移動時間をつくらないため。忙しい時間帯は立ち止まらない。キッチンにガスレンジどころか包丁もないのは、スタッフの技能に頼らないためだ。こうした細かい積み重ねが、圧倒的なコスト競争力を生みだす。
「新しい仕組みをつくるときは、『この業務はなくせないか』『何かに置き換えられないか』を考えます。扱う品目と作業を減らしてシンプルにすることで、どの店舗でも、どのスタッフでも均一なサービスが提供できる。当社の基本姿勢は、製造業と同じなんですよ。『売る、儲ける、努力させる』ことから『売れる、儲かる、方法を変える』という仕組みづくりへの転換を目指しています。もはやチェーンストアでは常識ではないのでしょうか」
※すべて雑誌掲載当時
(図版作成=ライヴ・アート)