顧客のメリットを考えてみる
割引クーポン券から本格的なCRMに代わり、顧客はどういうメリットが得られるようになったのだろうか。昔からある割引クーポン券では、顧客の側のメリットはもちろんあるが、正直にいって直接値引きしてもらったほうがいい。割引クーポン券は、お得感が高い程度である。
これに対して、今のマクドナルドの場合はどうだろう。当然、直接値引きに比べれば、顧客の側にどういうメリットがあるのかはわからない。ただ、会員登録していない顧客は、かなりの不利をこうむることになるだろうと推察はできる。単なる割引クーポン券の時代は、そのお店に行きさえすれば、次回は平等に割引してもらうことができた。けれども今は、会員登録が割引の有無を決定する。当然、会員登録の数は増え、企業はますますCRMに力を入れることになる。大きな割引が行われれば、会員登録していない顧客はますます不利になる。好きか嫌いにかかわらず、会員登録への誘因が高まり、場合によっては決定的に離脱するということになるだろう。
会員にさえなれば、それなりにハッピーかもしれない。自分が好きな商品を安くしてもらったり、好みに合った新しい商品を紹介してもらえるかもしれないからである。優良顧客として追加サービスしてもられるのならば、それはうれしい。1年前の段階で、既に会員は1000万人規模だったというから、かなりの規模である。
ただ一方で、僕たちがそうしたサービスを本当に求めているのかどうかはよくわからないところでもある。冒頭で学生の話をしたが、クーポンを通じてそうした選別がされていることについて、あまり自覚がないようだった(もしかすると、同じ学生ということで選別されていないのかもしれない)。自覚がないのだとすると、顧客の側としては、結局は直接値下げしてくれた方がいいのだけど、ということになる。
顧客の側からみる限り、もう少し別の価値が必要かもしれない。企業の側の希望として、顧客をできるだけうまく囲い込み、できるだけたくさん買ってほしいという気持ちはあるだろう。けれども、その気持ちに顧客が乗ってくれるかどうかは、また別の話である。購買情報はもちろん、それにひもづけられる属性情報も提供しているのだ。このあたり、個人的に以前まとめたもので少し関連する議論がある 。顧客の方は、わざわざ企業と仲良くしようとは思っていないというわけであり、そこには金銭的なりリスク低減なりのメリットが必要だというわけである。
http://mizkos.jp/RP95.pdf
では、CRMにせよロイヤルティ・プログラムにせよ、どういう未来がありうるのだろうか。次回はもう少し話を広げながら考えていくことにしたい。