CRMへの発展

ロイヤルティ・プログラムとは、要するにポイントカードを中心とした継続購買を狙うための仕組みである。その仕組みは、より広くはカスタマー・リレーションシップ・マネジメントという考え方に含まれる。細かい定義はいろいろあるようだが、個別の顧客情報をもとにして、より親密な関係性を構築していこうという考え方である。顧客がてりやきバーガーが好きだとわかれば、他にも好みそうな商品を割り出して紹介することができる。いつもたくさん買ってくれる優良顧客であれば、お礼に何か特別なサービスを提供することもできる。

より専門的なところでは、2次データということでネットで検索してみると、「組織能力としてのCRM」という論文が見つかった 。この論文によると、CRMをより戦略レベルで捉え、企業の組織能力にも関連づけていかなくてはならないようだ。

→近藤公彦「組織能力としてのCRM」
http://barrel.ih.otaru-uc.ac.jp/bitstream/10252/980/1/JMJ107_16-31.pdf

1年前にマクドナルドが考えていたアイデアは、組織能力にも結びつくCRMに該当するだろう。土日によくコーヒーを飲みにくる顧客には、週末の朝にコーヒーが無料になるクーポンや、あるいはコーヒーに合わせて食べてほしい商品の割引券が届く。最近こなくなった顧客に対しては、従来よく購入されていたハンバーガーを大きく割り引いて提供する。さらに、来店頻度の高い顧客であれば、新商品を割り引きながら新たな提案を行う。いずれも、購買履歴を中心とした顧客情報を元にして、顧客一人一人がよりマクドナルドを利用してもらえるようにというわけである。

昔ながらの割引クーポン券であっても、先にみたようにCRMを実施できる。けれども、顧客情報を集約し、分析し、対応するということはなかなか難しい。せいぜい、よく来てくれる顧客に追加的な割引クーポン券を発行するぐらいが限界だろう。顧客情報を集めるためには、単に割引クーポン券を提供するのではなく、事前に顧客を登録識別し、彼らの購買情報を記録し、その上で、割引クーポン券などを配って継続的な購買を促すようにしなければならない。

ネット環境やケータイの発達に伴い、ずいぶんとCRMの実施が容易になってきたわけだ。マクドナルドの場合、iPhoneやandroid上でまずはアプリをダウンロードし、空メールを送って会員登録する必要がある。改めて試してみると、子供がいる場合はその子の誕生日を入力する項目がある(必須項目ではない)。週末のハッピーセットのテレビCMを考えると、なるほど、マクドナルドの狙いがみえてくる気もする。

いずれにせよ、設定が終われば、自分に合ったクーポンが随時送られてくるようになる。当然、それぞれのクーポンの成果は集計され、その効果が測定されているのだろう。支払いもかざすシステムと連動し、iDなどで支払える。昔の割引クーポン券がデジタルになるだけで、ずいぶんとマーケティングは進化することがわかる。

手間も増えるが、とりあえず配っていた時代とは大違いだ。ただ、割引クーポン券には、もともとこうした機能が備わっていたことは補足しておいた方がいいだろう。あるとき、マクドナルドの無料コーヒーのクーポン券をもらったことがあるが、券には10桁ぐらいの番号が打ち込まれていた記憶がある。紙であっても、誰がどこで配ったものなのか、それがどのくらい使われたのかを集計することができる。

もっとよくある話では、街頭のティッシュ配りでも同じことが行われている場合がある。ティッシュの中に割引クーポン券などが入っているわけだが、テッシュを配った場所や時間帯に応じて、実は割引クーポン券の色が異なっている。そうすると、お店の側はいつどこで配ったものが最も効果的であったのかを測定することができるようになる。繰り返していえば、CRMの基本的な考え方は、こうして顧客の購買情報を収集し、分析できるようにするという方法と強く結びついている。