相手の苦労を当然とみなしてはいけない

先日、ある友人に会った。仕事と大学院を両立するのに疲れていて、そんな日々を嘆いていた。

「会社は僕が大学院に行っているのを嫌がって、授業に出席するだけでも大変だし、大学院は大学院で職場の事情なんて考慮してくれない……。こんな状態で論文なんか書けるんだろうか……」

あなたなら、どう言ってあげられるだろう?

「大変なのは君だけか? 僕だって大変だ。そもそも人生なんて苦痛の連続だよ。会社に通いながら勉強するのが簡単だと思ってたの?」

こんなふうに答えたら、話は続かない。相手はそれ以上は自分の悩みを打ち明けようとはしないだろう。相手の状況を「当然だとみなす」話し方は、会話を断ち切り、相手との関係性を損なう、絶対にしてはいけない話し方である。段階を追って、練習してみよう。

相手の悩みには繰り返しのリアクションを

【ステップ①】感情に対してリアクションを繰り返す。

「そうなんだ。最近、すごく大変なんだね」

おそらく相手は「うん。本当に大変なんだよ」と言うだろう。だが、ここで止まると会話は発展していかない。

そこで、第二段階に移ろう。

【ステップ②】相手の具体的な問題に対してリアクションを繰り返す。

「働きながら大学院の論文を書くなんて、本当に大変そうだね」

ここまで話せれば、あなたの話し方はなかなかいい線をいっている。相手の悩みに対して、そんなことは当然のことだという話し方をしない、いわば「話し方の達人」の域だ。相手の感情と悩みに対して、繰り返し確認するようにリアクションすれば、相手はこう言うだろう。

キム・ボムジュン著、朝田ゆう訳『「また会いたい」と思われる人は話し方が違う』(扶桑社)
キム・ボムジュン著、朝田ゆう訳『「また会いたい」と思われる人は話し方が違う』(扶桑社)

「そうなんだよ。わかってもらえてうれしい。じつはさ……」

この先は、相手もきっと自分で解決策を見つけようとするはず。相手の心のなかに隠れていた可能性を見つけ出し、最後には自分で前進できるように仕向ける話し方である。

ここでさらに、劇的に相手との関係が深まり、相手が自ら道を切りひらいてよい結果につながる話し方がある。まさに一挙両得。自分と相手の関係性はもちろん、相手も成長できる話し方だ。こう言おう。

「君だから、そんなふうに仕事と勉強を両立できるんだよ。僕だったら、いや普通の人ならとっても無理だ。君みたいな友達がいることを自慢に思うよ!」

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