ワイドショーで特集が組まれたきっかけ

風向きが変わりはじめたのは今年1月11日。警視庁がガーシーの関係先数カ所を暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)、名誉毀損きそんなどの容疑で家宅捜索したことが明らかになると、メディアの報道がジワジワと増えはじめる。

1月30日、尾辻秀久参議院議長が国会出席を求める招状を発出。さらに2月8日、7日間の出席期限を過ぎたため、懲罰委員会による「公開議場における陳謝」という処分が決定する。このあたりから急激にメディアの動きが活発化し、ワイドショーでもガーシーが繰り返し扱われはじめた。

3月7日、トルコに渡航していたガーシーは本会議欠席の意向を示し、代わりに陳謝動画の提出を希望したが、与野党理事が拒否。同8日、ガーシーが参議院本会議を欠席したことを受けてNHK党の立花孝志党首が辞任し、党名を政治家女子48党に変更した。

その後、懲罰委員会が最も重い「除名」を科し、同15日の参議院本会議で可決。同16日、警視庁捜査二課がガーシーに前述の容疑で逮捕状を請求し、警視庁が外務省に旅券返納命令を要請したことが明らかになった。

2月から3月にかけて明らかにガーシーをめぐるニュースが量産されている。「除名」「党首辞任」「逮捕状」などの刺激的な内容こそあるが、これまでとの落差を見て「何で急に増えたのか」「そんなに報じるべきことなのか」などと感じた人がいたのではないか。

テレビ局員の本音

現在、メディアの報道が増えているのは、ガーシーのニュースバリューが上がったからにほかならない。

実際、知人の情報番組プロデューサーに聞いてみたら、「除名が72年ぶりとか、即逮捕状とか、こんなに報じやすいニュースはない」と言っていた。処分検討の段階で尾辻秀久参議院議長と鈴木宗男懲罰委員長が登場し、事態が一気に劇場化したことが大きかったのではないか。

これまでの「登院しないガーシーがよくないことは子どもでもわかる」という白けたムードから、尾辻秀久参議院議長と鈴木宗男懲罰委員長、ひいては議員全体が明確な対立図式になったことで、「人々の関心を誘い、社会的意義がある」という見方に変わった。

また、そのプロデューサーは言わなかったが、各メディアの本音としては、「政治で数字が上がるのはこういう国民の怒りを買い、処罰を求めるようなニュース」という狙いもありそうだ。

今後も扱いの大小こそあれ、ニュースバリューが急落しない限り、「国際手配や不法滞在の状態になるのか」「現地での拘束や強制退去などはあるのか」「逃亡劇が続いていくのか」などの報道は続いていくだろう。